「レンタカーを借りる」「沖縄まで旅行に行ってきた」に違和感を覚える? 校閲担当者は“重複表現”にどう対応するか
さまざまな重複表現
それでは、次のような表現についてはどうでしょうか。
4.お盆休みを利用して、石垣島に旅行に行ってきた。
5.歌を歌うとストレス発散になる。
6.名古屋まで新幹線で行って、そこからはレンタカーを借りた。
7.サクサクの生地が幾重にも重なったミルフィーユ。
8.さかのぼること5年前、私は転職活動をしていた。
4番と5番は「名詞と動詞に使われている漢字が重複している例」です。しかし、どちらも文章として間違っているわけではありません。「旅行に行く」も「歌を歌う」も日常会話では頻出する表現で、これらをわざわざ「旅行する」「歌を口ずさむ」などと必ず言い換えねばならないわけではありませんよね。
6番の「レンタカーを借りる」、7番の「幾重にも重なる」も重複表現と言われることがありますが、ごく一般的な表現に思えます。
8番はどうでしょうか。こちらも、私はこの職に就いてから知った重複表現です(積極的に己の無知をさらけ出すスタイル……)。「さかのぼること」の後に来るのは“時間の長さ”なので「前」は必要ではなく、「さかのぼること5年」にすべきだというのです。しかし、8番の言い方も実際には非常によく使われていて、「言われれば確かにそうだが、ほとんど違和感がない」表現だと感じる方も多いのではないでしょうか。
もう一つだけ例を挙げておきます。
9.一番最初に志賀の小説を読んだのは、14歳の時だった。
当連載で、AIの素読み能力を確かめた回の文章を改変したものです。「一番最初に」が重複表現で、単に「最初に」などとするのが正しい、と言われます。
しかし、生成AI(ChatGPT、Geminiの最新バージョン、ともに有料版)では、この「一番最初に」という表現について何も指摘されませんでした(以前の連載をご参照ください)。AIは、意識的か無意識かわかりませんが、この表現を特に問題視はしていないようです。
また、今までの例以外にも、「二重敬語は避ける」「接続詞の重複」(しかし~~、しかし……など)といった別のタイプの重複表現が色々とありますが、ここでは割愛します。
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