「レンタカーを借りる」「沖縄まで旅行に行ってきた」に違和感を覚える? 校閲担当者は“重複表現”にどう対応するか

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 こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。

 今日は、常用漢字のクイズです。次の4つの漢字のうち、常用漢字は1つだけです。どれでしょうか?

 A.炒 B.溜 C.喩 D.狼

「かねてから」「かねてより」

 さて、皆さんは以下の3つの文章について、それぞれどうお感じになるでしょうか。

1.かねて願っていた那覇支社への異動がついに叶った。
2.かねてから願っていた那覇支社への異動がついに叶った。
3.かねてより願っていた那覇支社への異動がついに叶った。

 那覇支社、沖縄、エメラルドグリーンの海、うらやましい……というのは置いておいて、3つとも「かねて」という副詞が使われています。漢字で書くと「予て」(もしくは「兼ねて」)。意味は「以前から、前もって」(『岩波国語辞典』第8版)で、会話ではあまり使われない言葉ですが、新聞や週刊誌の記事などでは非常によく見かけます。

 ここで考えてみたいポイントは、「重複表現はどれだけ許容されるか?」です。

「かねて」という語句は、上の2番・3番の文章のように「かねてから」もしくは「かねてより」という使い方をすることが非常に多いのですが、上記の辞書にあるように「かねて」自体に「~から」という意味を含んでいますので、「かねてから」「かねてより」は重複表現と見る向きがあり、現場では1番の「かねて」にする方向で校閲疑問を出すケースがあります。

 白状しますと、私は校閲の仕事を始めてから数年間、「かねてから」「かねてより」が重複表現であるという発想自体がありませんでした。他の校閲者の方の疑問を見て初めて知ったのです。

 ちなみに、当連載でも以前に言及した、日本語の用例検索ができるサイト「コーパス少納言」で検索すると、1971~2005年刊行の書籍で「かねてから」は188件、「かねてより」は60件の使用例がありました。

「かねて」単体よりも「かねてから」「かねてより」のほうが、意味が伝わりやすいと感じる書き手の方が多いのでしょうか。これだけ実際に使われていれば、校閲者が“間違い”と断じてはいけないように思えます。

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