「わし、ボケナスのアホ全部殺すけえ」 通行人をハンマーで殴り、包丁で突き刺して8名殺傷「池袋通り魔事件」の一部始終 死刑は執行されないまま「26年」
マトモじゃない
「突然、東急ハンズの方から女性の悲鳴が聞こえたんで、驚いてそちらを見ると、雪崩を打ったように人がこっちに押し寄せてきたんだよ」
と言うのは、60階通りに立っていた看板持ち。
「すると、男がハンズの入口の前に、両手をぶらんと下げるような恰好で立っていた。印象的だったのは目だね。虚ろというのか、最初はクスリでラリっているのかと思った。両手を見ると右手に包丁、左手にハンマー。これはマトモじゃないと思ったね」
路上に出た造田は、近くにいたB子さん(29=当時)にも襲いかかった。やはり夫とともに、パスポートの申請のためにサンシャインシティに向かっていたB子さんは、背中を刺され、亡くなっている。
手で触ると血が
「奴がこっちに歩いてきたんで、俺は看板で応戦しようと思ったんだよ」
と、看板持ちが続ける。
「だけど、近くにいた人に止められて車の陰に連れていかれた。で、見ていたら、路上で携帯電話を掛けてる男がいた。状況が掴めていないようなんで俺が“危ない”と叫んだ直後、腹を刺されちゃったよ。とにかく一瞬の出来事だったけど、最初の女性の悲鳴が聞こえた後は、まるで無声映画を見ているようだったね。声は聞こえていたんだけど、不思議に他の音が聞こえなかった。それに全てのことが、スローモーションで動いているみたいだったよ」
その後も、造田は次々と通行人を刺している。
「あの日は学校の始業式を終え、同級生と4人で池袋に行ったんです」
と語るのは、被害に遭った私立武蔵高校の1年生だ。
「携帯電話のストラップを買ったり、CDを見たりして、帰ろうと駅に向かっている時、急にドンと背中に人が当たってきた。横を通りすぎる時、ハンマーが見えたので、何だこれはと思いましたよ。その後、仲間にも次々と当たっていった。周りの人に背中から血が出ていると言われて、手で触ると血が付いてきたのでビックリしました。やられたのは3人。1人だけは、背中にデイパックを背負っていたせいか助かったんです」
テレビゲームに熱中
それにしても、白昼の池袋を恐怖に陥れた造田博とは、一体どんな人物なのか。出身は、岡山県倉敷市に隣接する児島郡(現:岡山市南区)灘崎町。
「もともと造田家は農家でしたが、父親は大工をしていました。その次男として生まれた博君は、おとなしい無口な子供でしたよ」
と語るのは、近所の住人。
「ただ、性格的にはわがままなところがあった。自分が何か欲しいと思ったら、どうしても手に入れようとする。両親は何でも欲しがる物を買い与えていたし、小さい頃はテレビゲームに熱中し、外で遊ぶより家に籠もっていることが多かったようです」
地元の公立中学校を出て、県立倉敷天城高校に進むが、一家に異変が起きたのは、ちょうどその頃のことだった。
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