THE ALFEE高見沢の「エンジェルギター」を手掛ける「日本が誇るギターメーカー」…最大のポリシーは「なんでもやってみる」

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 THE ALFEEの高見沢俊彦氏が、音楽番組などで“エンジェルギター”を手にする場面が映し出されると、SNSは「なんだあのギターは!?」「ゲームに出てきそう」と、大いに盛り上がる。あの奇抜なギターは、いったいどこで作られているのだろう――と興味をもった人も多いのではないだろうか。【取材・文=山内貴範】(全2回のうち第1回)

ギター作りは日本の伝統産業

 高見沢氏のギターを製作しているのは、1975年に創業、今年創業50年を迎えた日本のギターメーカー「ESP」である。ESPのギターの愛用者は国内外のそうそうたるミュージシャンばかりである。LUNA SEA及びX JAPANのSUGIZO氏、横山健氏、高崎晃氏など、名だたるアーティストから依頼を受けてギターを製作している。

 そもそも、プロミュージシャンの使用に耐えうるエレキギターを生産しているメーカーは世界でも限られた国にしか存在しない。日本のほかにはギブソンやフェンダーがあるアメリカなど、数か国しかないのだ。そして、日本のメーカーのなかでも、ESPは伝統的なスタイルから奇抜なものまで、あらゆるギターを製作できる唯一無二の存在として知られる。

 日本は国土の70%を森林が占め、法隆寺など世界最古の木造建築から、家具づくりに至るまで、世界に評価される木製品のメッカである。木材を使って生み出されるギターもまた、日本らしい伝統産業と言っていいかもしれない。そんなギターづくりの伝統を継承しているESPの工房を見学した。

修理、改造を経て製作へ

 ESPの工房は、埼玉県の郊外、三芳町の幹線道路沿いにある。工房で迎えてくれたのは、ESPの取締役社長・山田雅典氏、そして現場の責任者でギター職人歴29年のベテラン・上田哲氏。建物のシャッターの前に立つと、心地よい木材の香りが漂ってきた。ここがギター工房なのだと実感できる。

 ESPが創業されたのは1975年である。70年代は日本のロック黎明期に当たり、ライブハウスやロックフェスが注目を集め始めていた。しかし、当時の日本には、ギターのメンテナンスを満足に行える業者が少なかった。メーカーの修理に出すと時間がかかるため、困り果てているミュージシャンも多かったという。

 現場でミュージシャンの悩みを聞いていた創業者は、その思いに応えるべく、原宿にギターのメンテナンスを手掛ける店舗を出した。「当初は音響機材などのレンタルも行う、音響周りの何でも屋ともいえる体制でしたが、本格的にギター製作にも乗り出していくことになります。そのきっかけはミュージシャンの要望でした」と、山田氏が言う。

「修理を依頼してくださっていたミュージシャンから、改造の依頼が入るようになりました。そういった要望を断らずに引き受けていると、ついに“自分が好きな形のギターを作ってもらえないか”とお願いされるようになりました。1970年代後半はアメリカのミュージシャンの間で、ギターを改造したり、自作するのがブームになっていたんですよ」

 ESPがギターの製作を始めると、口コミで評判を得るようになっていった。やがて、日本のトップギタリストであるChar氏や高崎晃氏など、人気ミュージシャンから相次いで製作依頼を受けるようになると、波に乗った。なお、高見沢氏も1980年代前半にはESPにギターを注文し、実に40年以上もの深い関係を築いている。

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