THE ALFEE高見沢の「エンジェルギター」を手掛ける「日本が誇るギターメーカー」…最大のポリシーは「なんでもやってみる」
エンジェルギターを作るのは一人の職人
写真撮影こそNGだったものの、今回は特別に、高見沢氏のエンジェルギターを手掛けるA氏に対面することができた。なんと、エンジェルギターは分業制ではなく、A氏がデザインから加工、塗装まで一貫して一人で製作しているのだ。まさに、A氏はESPの数いる職人のなかでも“究極の職人”なのである。
A氏の机の横には、ボール紙で作られたエンジェルギターの原寸大の平面図が置かれていた。ゴジラのソフビ人形も置かれていたが、これは高見沢氏の要望で“ゴジラギター”を製作したときのもの。A氏はゴジラの造形をとことん研究し、ギターのデザインに反映するために、自腹を切って買い求めたのだという。会社の経費でも購入できたはずなのだが、身銭を切ってまで研究を惜しまないのがA氏の流儀だ。
高見沢氏のエンジェルギターの第1号は1991年に誕生したが、どんどん大きく、派手になっていった。最新作もエンジェルの周りを衣装や羽が囲む、複雑極まりない造形である。そして、エンジェルギターのアクセントになるのがエンジェルの顔だが、その穏やかで慈悲深く、優しさにあふれた顔はA氏しか生み出せないのだという。
上田氏は、「エンジェルギターは高見沢さんとESPが対話を重ねながら進化していった木工技術の象徴といえますし、創業以来、アーティストの要望に応え続けてきたESPの精神をもっとも表すギターといえます。その製作の過程で生み出された技術で、他のギター作りに反映されたものも少なくありません」と話す。
工房で作業をしている若手の職人にも話を聞くことができた。自身がもともとファンだったアーティストのギターの製作を偶然にも担当することになり、「最高に嬉しかった」と語る。現在手掛けているギターも、そのアーティストがステージで使うものだそうである。職人たちは生粋の職人であるとともに、無類の音楽好きなのだ。そうした愛情こそが、優れたギターを作る原動力になっていると言っていいだろう。
第2回【日本を代表するギターメーカー「ESP」が“職人養成学校”にこだわる理由 「ゼロから教えて、卒業までに25本のギターを作った学生も」】では、筆者がギターメーカー「E S P」が運営するギター職人養成学校を訪れ、そこでどのような教育が行われているのかなどについて詳細にリポートする。









