山下達郎はなぜ「ルージュの伝言」でコーラスをつとめたのか

芸能2016年11月15日掲載

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 ポップ・ミュージックの世界では、意外な大物がコーラスをつとめている例がときおり見られる。

 ザ・ビートルズの「愛こそはすべて」では、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズがコーラスに加わっているし、一方でストーンズの「この世界に愛を」では、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが返礼とばかりにコーラスに加わっている。この「この世界に愛を」をカヴァーした坂本龍一ヴァージョンでは、ザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンがコーラスをつとめているのを知っている人は、なかなかのマニアかもしれない。

 さて、J-POPの世界では、松任谷由実(62)さんの名曲「ルージュの伝言」のコーラスの豪華さは相当なもの。山下達郎さん、吉田美奈子さん、大貫妙子さんという錚々たるメンバーが担当しているのである。

 なぜこういう面子になったのか。

 プロデューサーである松任谷正隆(64)さんの新著『僕の音楽キャリア全部話します』には、意外な事情が明かされている。(以下、引用は同書より)

 当時、ユーミンのバックをつとめるバンドは、レコーディングとツアーとで、別々のメンバーになっていた。レコーディング時には、正隆さんの他、細野晴臣さんや鈴木茂さんら、当時の一線級のミュージシャンたち(ティン・パン・アレー)。一方、ツアー・メンバーはそれよりも少し腕が落ちる面々だったようだ。

 しかし、ある時、ツアーバンドのメンバーたちに「たまにはレコーディングに参加させて欲しい」という要求が出された。正隆さんはOKしたものの、演奏のクオリティはいつもと比べると劣ったようで、「手ごたえがなかった」ものになったという。

 そのため、ストリングスを加えるといったこともしたが、

「まだ僕の感覚としては60点という出来でした。このままレコードにはできないと思った」

 そこで正隆さんがひらめいたのが、山下さんをコーラスに、という発想だった。これまでにもコーラスを担当してもらった縁があった。

「すると、彼(山下さん)は(吉田)美奈子とター坊(大貫さん)と伊集加代子さんを集めてコーラスをつくってくれた。
 あれで抜群のアメリカン・ポップになりました。
 だから、『ルージュの伝言』に関しては、山下の力がすごく大きい。
 結果的に由実さんのポップ・シンガー路線を開拓してくれました」
 
 もとはといえば、ツアー・メンバーのエゴから発生したアクシデントなのだが、それを逆にプラスに転化するあたりは、さすがだと言えるだろう。

デイリー新潮編集部