犯罪者が狙う家の「二つの特徴」とは 「高齢者のフェイスブックは、犯罪者にとって“宝の山”」
牧歌的な時代はもう戻ってはこない……。インターネット、SNS全盛時代のいま、わずかな“隙”さえ見逃さない犯罪者がすぐそこに潜んでいる。彼らから身を守るには何をすべきなのか。犯罪学の泰斗が「論」から「実践術」まで解説する、令和の最新・防犯対策。【小宮信夫/立正大学文学部教授】
***
【写真】「ルフィ事件」小島被告が“ガチ恋”したフィリピン人女性。スタイル抜群で滝沢カレン似の美女だ
「常人には理解しがたい今回の異様な犯罪様態は、犯行に及んだ人間の苛烈な生育環境によるトラウマに起因するものと考えられる」
名刑事が鋭い洞察力で動機を推理し、犯人を追い詰めていく……。
ドラマにしろ、映画にしろ、日本人は犯罪における「動機」が大好きです。なぜ犯人は犯行に及んだのか。そこには確固たる動機が存在し、特有の原因があるはずだ。その謎を解き明かしていく物語に快哉を叫ぶ傾向が、日本人には強いと感じます。
このような犯罪観を「犯罪原因論」と言いますが、世界の潮流は全く別で、残念ながら犯罪原因論をいくら突き詰めても犯罪の抑止にはつながらず、防犯にも役立ちません。端的に言って、同じ境遇にあっても犯罪に走る人もいれば、走らない人もいる。考えてみれば当たり前の話です。
では、「ルフィ事件」などのトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)が猛威を振るう現在、防犯力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。それはまず、「犯罪機会論」を知るところから始まります。
〈こう説くのは、立正大学の小宮信夫教授(犯罪学)だ。
日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了した小宮氏は、法務省や国連アジア極東犯罪防止研修所などで研鑽を積み、警察庁の「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」座長も務めた、犯罪抑止・防犯の権威である。
そんな小宮氏の目には、「犯罪者天国」に映るほど日本の防犯対策は遅れているという。〉
70円のために地位も退職金も……
2024年、兵庫県のとある市立中学校の校長が懲戒免職処分を受けました。コンビニでセルフサービススタイルのコーヒーを購入する際、レギュラーサイズの代金110円しか払っていないのに、180円のラージサイズ分のコーヒーを注ぎ、窃盗容疑で書類送検されたことが大きな理由でした。たった70円の差額のために、校長は地位も退職金も失ってしまったのです。
なんと割に合わないバカなことをしたのか、と感じる人もいるでしょう。しかし、この一件は犯罪の一面を実によく表しています。世の中には、いくら費用対効果が悪そうに見えても、そこに「機会」さえあれば犯罪に踏み出してしまう人がいる。その校長は、70円分得しようとしたというよりも、目の前にカタルシス(ストレス解消)や優越感を得られる「機会=チャンス」があったから犯行に及んだのではないでしょうか。つまり「機会」が犯罪を誘発したのです。
[1/5ページ]


