短いエッセイなら「わずか10秒」で完了も…驚異的に早い「AI校閲」が“苦手とする誤植”とは? 「人間が読めば誰もが覚える違和感がスルーされている」

  • ブックマーク

AI校正ツールの実力は?

 今回はもう一つ、生成AIではなく「AI校正ツール」にも同じ文章をチェックしてもらいました。具体的なサービス名は伏せますが、月ごとに課金される有料のものです。
 
 結果としては、句点の重なりやひらがなの誤植など、ごく単純なミスはおおむね拾ってくれましたし、差別表現も2箇所中1箇所(「金髪の女性」のほう)は指摘してくれました。しかし、「ワクチン摂取」などの誤植や、文脈から判断する必要がある箇所などについては指摘がなく、27箇所中13箇所の指摘にとどまりました。

「AI校正ツール」についても、入稿前の原稿整理としては最適かもしれませんが、それを使ったからと言って「校閲(校正)が終了した」とは決してならないと感じました。ただ、例えばweb記事における「NGワード」の洗い出しなどには威力を発揮するでしょう。組織内でうまく使いこなせば、人間の労力を他のもっと大事なところに割くことが可能です。

2025年のAIが認識できていない「違和感」

 総括として、2025年時点では、校閲の素読み作業において「AIが得意な誤植」と「AIが苦手な誤植」があるのだな、と感じました。特に、文脈を読み込むことによって自然とわかるような誤植、つまり「ここは“三島”ではなく“志賀”が正しいだろう」、といったような、生身の人間なら持つことのできる「違和感」のようなものがAIにはまだまだ共有されていない、という印象です。

 とはいえ、それもあくまで2025年時点の話なのかもしれません。例えば、スマートフォンがここまで普及するとは25年前の2000年にはほとんど誰も予想していなかったでしょう。25年後、2050年のAIはどうなっているでしょうか?

 次回は、校閲3要素の3つめ「合わせ」とAIの関係について見ていきます。

甲谷允人(こうや・まさと Masato Kouya)
1987年、北海道増毛町生まれ。札幌北高校、東京大学文学部倫理学科卒業。朝日新聞東京本社販売局を経て、2011年新潮社入社。校閲部員として月刊誌や単行本、新潮新書等を担当。新潮社「本の学校」オンライン講座講師も務める。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。