短いエッセイなら「わずか10秒」で完了も…驚異的に早い「AI校閲」が“苦手とする誤植”とは? 「人間が読めば誰もが覚える違和感がスルーされている」
生成AIは差別表現に強いのか?
また、今回の文章には差別表現を2箇所、盛り込んでいたのですが、ChatGPTではそのうち1箇所しか指摘してくれませんでした。
具体的には、「店員の女性は金髪の割に頭がよさそうだった」(ジェンダー、容姿についての差別)について、ChatGPTは指摘してくれましたが、「カニなんかを獲って生計を立てている漁師の気が知れない」、すなわち職業差別に関する記述については指摘がなかったのです。ChatGPTは差別表現のチェックに強いという印象を個人的に持っていたので、この結果は意外でした。
ただし、ChatGPTに「カニなんかを獲って生計を立てている漁師の気が知れない、という文章には差別表現が含まれますか?」と改めて個別に質問すると、「はい、その表現は差別的・侮蔑的なニュアンスを含む可能性が高いと考えられます」との回答に始まり、詳細な見解を述べてくれました。長い文章の中にあると埋もれてしまうのでしょうか。このあたりはAIも“進化の最中”なのかもしれません。
というわけで、ChatGPTは「必ず明記すべき指摘」27箇所中のうち、20箇所の指摘となりました(答えの画像を参照)。
以前の連載で触れたように、校閲疑問は多ければ多いほどよい、とは限らないのですが、「指摘すべき箇所」をスルーしてはいけません。ChatGPTが10秒でここまで拾えるのは驚異(いや、脅威?)で、単純な誤植はかなりさらってくれましたが、「対象の取り違え」「時系列の把握」などに大きな課題があることもわかりました。
他の生成AIはどうか
続いて、Gemini(googleが提供する生成AIサービス、バージョンは最新版の2.5Pro)にも同様に校閲をお願いしました。結果としてはChatGPTと大差なく、27箇所中18箇所の指摘。「三島」「姉」や時系列の問題に関しては同じくスルーでした。
……と、私はここで、「AIも意外と大したことねーじゃねーか」と、言いたいのではありません。人間の校閲者として“既得権益”を主張したいわけでもありません。むしろ、AIの良い部分は出版業にもどんどん取り入れたほうがよいと思っています。
AIにおいて特筆すべきは、やはりその処理スピードです。単純な誤植を「10秒で」しっかり拾う腕前については、どんなスーパー校閲人間でも絶対に叶いません。今後はこの処理能力がさらに向上していくのかと思うと身震いがします。
しかし、現時点では、「校閲者としてちゃんと指摘すべきところ」をすべて網羅してくれているわけでは全くなく、ファクトチェックと同様、AIに素読みを一任することはできない、と言い切れます。現時点ではあくまで「書き手側が」、入稿前に補助的に使うというイメージでしょうか。
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