短いエッセイなら「わずか10秒」で完了も…驚異的に早い「AI校閲」が“苦手とする誤植”とは? 「人間が読めば誰もが覚える違和感がスルーされている」

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 こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。
 
 毎回、当連載では冒頭にクイズを掲載していますが、今回のクイズは「エッセイの校閲」です。

 クイズで使用した文章をそのまま、生成AIやAI校正ツールにも校閲してもらいました。今回の連載ではその結果をご紹介しますので、皆さんも連載を読む前にぜひ校閲に挑戦してみてください。

 調べ物(ファクトチェック)は不要です。最初から最後まで読んでいって、明らかな誤字脱字や差別表現、また著者に確認すべきと感じた箇所をメモしていってください。プリントアウトして挑戦していただくのがお薦めです。

 これまでの連載で出てきた、「判断に迷う表記、表現」を盛り込んだため、内容は荒唐無稽ですがご了承ください(校閲はどんな文章が来ても、つねに真摯に向き合わねばならないのです……)。

 制限時間は5分間です。では、どうぞ!

AIにエッセイを校閲してもらった

 さて、当連載では前々回から、「AIに校閲は可能なのか?」を検証していますが、今回はその第3弾です。“素読み”、すなわち単純な誤字脱字や差別表現など、文章を一字一句確認して、著者に確認すべき箇所を洗い出す作業について考えます。現在の、そして未来のAIがどこまで素読みを担えるのか、見ていきましょう。

 クイズに挑戦していただいた方は、先に答えを確認してみてください。答えにあるように、人間の校閲者なら全部で31箇所の校閲疑問が出ると想定しました。ただし、校閲者によって微妙に扱いの変わる箇所もあり、「必ず明記すべき箇所」は27箇所です(詳細はクイズの答えをご覧ください)。

 では、AIはどう校閲したでしょうか。

 まずは「ChatGPT」(最新版の「GPT-4o Pro」、2025年7月14日時点)に校閲してもらいました。ちなみに、かかった時間はなんと10秒ほど! 人間の30倍のスピードです。

 つづいて、校閲結果の中身を見ていきます。

 例えばカギカッコの形の違いや、「10月21月」、「機能の午前中」(正しくは「昨日の午前中」)、「第一間接」、「深掘り」「健庚」といった、単純な誤植についてはビシビシ指摘してくれました。「成果」という言葉の誤用についてもしっかり気づきました。
 
 とはいえ、スルーした箇所も多々、見受けられました。例えば「志賀」「三島」の混同です。文脈上、突然「三島」が出てくると違和感がありますが、何も指摘されませんでした。また、同席していたのが「友人」と「姉」で揺れていたり、「午前中……行く前……正午過ぎ」の時系列についてもスルーしていたり……。対象者の取り違えや時系列の齟齬などは、実際のゲラでも頻出する重要な確認箇所で、「必ず指摘しなければならない箇所」の一つです。

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