「花粉症の人はがんリスク半減」 データが示す、がんになりやすい人、なりにくい人 「スマホ依存症と乳がんにも関係が」

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

強い抗炎症作用

 栄養素に関するデータを見てみると、近年、ビタミンDのがん予防効果がいくつも報告されています。ビタミンDのサプリメントを摂取することによって進行がん(転移性のがん、致死的ながん)の発症リスクが17%低下する。あるいは毎日ビタミンDのサプリメントを摂取すると、プラセボ摂取群(偽薬摂取群)と比較してがん死亡リスクが12%低下するといった報告がなされています。

 ビタミンDには強い抗炎症作用があるため、これががん予防につながると考えられます。今のところ、エビデンスを伴う「がん予防サプリメント」と呼べるのはビタミンDに限られる、と言っても差し支えないのではないかと思います。日本人の9割はビタミンD不足といわれていますので、ぜひビタミンDサプリメントを有効活用してみてください。

 さらに、「がんと水分」について見てみましょう。適切な水分摂取は健康維持に欠かせず、がん予防においても水分不足は悪影響を及ぼしますが、飲料からではなく、食べ物から水分を1.5リットル以上摂取すると、最も少ないグループと比較して、がんリスクが有意に下がる。こんな内容の論文が、22年に「Frontiers in Nutrition」という栄養学の雑誌に掲載されました。水分が多い食べ物の代表的なものとしてはトマトが挙げられ、リコピンが豊富なトマトは「10の抗がん食材」の一つでもあります。

できるだけ立って仕事を

 最後に、私自身が取り組んでいるがん予防法を紹介したいと思います。

 座り過ぎはがんになりやすいという話をしましたが、この調査結果を知ってから、私も職場ではできるだけ立って仕事をするようになりました。部屋にスタンディングデスクを持ち込み、そこにパソコンなどを置いて作業しているのです。

 初めは疲れましたが、1週間もすると慣れました。立つ姿勢を維持するための筋肉が強化されたのだと思います。集中力が削がれるということもなく、ちなみに腰痛も改善されました。もちろん、四六時中立ち続けるのは不可能ですから、帰宅後は座ってゆっくりくつろぐためにも、職場ではできるだけ立って仕事をするように心がけています。

 もし、みなさんの職場が、スタンディングデスクの使用を認めてくれないとしたら……。職員の健康を考えてくれないその職場環境こそが、がんリスクの一つといえるかもしれません。

佐藤典宏(さとうのりひろ)
帝京大学福岡医療技術学部教授。1968年生まれ。九州大学医学部卒業。日本外科学会専門医・指導医、がん治療認定医。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部留学、産業医科大学助教などを経て、現職に。これまで、すい臓がんを中心に1000例以上の外科手術を行ってきた。『がんにも勝てる長生き常備菜』などの著書があり、最新刊は『専門医がやっている「がん」にならない50の習慣』。

週刊新潮 2025年8月7日号掲載

特別読物「こんな生活習慣がリスクを上昇させる…データが示す『がん』になりやすい人、なりにくい人」より

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[5/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。