「花粉症の人はがんリスク半減」 データが示す、がんになりやすい人、なりにくい人 「スマホ依存症と乳がんにも関係が」

ドクター新潮 ライフ

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ズボラな人に朗報

 また、スポーツも、がんを含めた死亡リスクを低下させます。水泳(5%低下)、ウォーキング(9%低下)、ランニング(15%低下)を上回り、最もリスクを低下させるのはテニスやバドミントンなどのラケットスポーツ(16%低下)という調査結果が出ています。ラケットスポーツは運動の強度が高く、筋肉などにより強い刺激を与えることや、チームメイトあるいは対戦相手とコミュニケーションを取る機会が多く、その精神的な効果も要因として考えられます。

 そう言われても、筋トレやスポーツを習慣化するのはズボラな自分には無理。そんな人に朗報です。

「VILPA(ヴィルパ)」という言葉をご存じでしょうか? 「激しく一時的な日常生活における身体活動」のことで、例えば電車に乗り遅れるのを防ぐために駆け足をしたり、階段を急いで駆け上がったり、掃除でせわしなく動いたりする身体活動がヴィルパに相当します。

 オーストラリアとイギリスの合同研究チームが2万5000人以上(平均年齢62歳)を対象に調査したところ、1日1回ヴィルパをするだけで、全くしない人よりもがん死亡リスクが下がることが判明しています。さらに、1日3回ヴィルパをすると約30%もリスクが低下します。

花粉症の人はがんによる死亡リスクが低減

 ジム通いやジョギングを日課としていない人、あるいはできない人でも、通勤時に少し駆け足をしたり、家事をこなしたりするだけで、がんは予防できる――。ヴィルパのがん予防効果を知ると、体を動かすのが苦手な人でも、かなり気が楽になるのではないでしょうか。普段、ちゃんと家事をすればがん予防につながるのですから。この点から考えると、座り過ぎやスマホの使い過ぎに注意するのを含め、「人間らしい日常生活をしっかりと送る」ことが、がん予防にとっていかに大切かが分かると思います。

 続いて、運動や睡眠以外の、がん予防に関する興味深いデータを紹介していきたいと思います。

 常に目がかゆく、くしゃみと鼻水が止まらなくなり、シーズンが来る度にとても憂鬱(ゆううつ)になる……。毎年、多くの人が悩まされ、2人に1人以上が発症しているとされる花粉症は、がん以上の“国民病”ともいえます。花粉症の人からすると、症状がない人はうらやましくて仕方がないと思いますが、実は花粉症にも“メリット”があります。

 群馬県の中高年住民約1万人を対象にした観察研究によると、花粉症のある人とない人のその後を比較したところ、前者のがんによる死亡リスクは52%も低下。実にリスク半減です。また、花粉症歴がある人のすい臓がん発症リスクは43%低かったという論文も発表されています。

 そのメカニズムはまだ解明されていませんが、アレルギーの一種である花粉症の人は、免疫機能が活性化し、鍛えられたため、がんになりにくいのではないかと推察されます。いずれにしても、花粉症の人は目のかゆみや止まらない鼻水で損ばかりしている、というわけではないといえそうです。

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