「花粉症の人はがんリスク半減」 データが示す、がんになりやすい人、なりにくい人 「スマホ依存症と乳がんにも関係が」

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

「寝過ぎ」の人の大腸がんリスクは3.8倍

〈帝京大学福岡医療技術学部の佐藤典宏教授は、すい臓がんを中心に、これまで1000例以上の外科手術を行ってきた「がん治療認定医」で、さまざまなデータを分析し、がん予防の啓発に力を入れている。

 そんな佐藤氏が解説するのが、迷信やうわさの類いではない「本当のがん予防法」である。〉

 全ての部位のがんリスクが高い傾向にあり、とりわけ男性ではすい臓がんリスクが2.3倍、女性では肺がんリスクが2.8倍になる。これが仕事中の座位時間が7時間以上の人の「現実」です。従って、座り過ぎを防ぐことが、がん予防には有効といえます。

 まず、座らずに立っているだけで、筋肉を使いますから代謝や血流が促進されます。つまり座位時間を減らすことは、身体活動量を増やす第一歩であり、それががん予防に役立つわけです。加えて、座位時間が長いと、例えばソファに座りながらポテトチップスを食べたり、ゴロゴロとうたた寝して夜の睡眠が不規則になったりと生活習慣が乱れ、不健康につながる点も考慮すべきでしょう。

 なお、睡眠時間に関しては、海外の研究によると6時間未満の寝不足気味の人の大腸がんリスクは2.1倍、逆に9時間以上で寝過ぎの人は3.8倍になると報告されています。日本人を対象にした調査でも、がんに限らず全ての死因による死亡率は、睡眠時間7時間の人が最も低いことが明らかになっています。座り過ぎだけでなく、寝過ぎも、がんの要因になるのです。

明るい部屋で寝ると……

 また、20年に「Cancer Management and Research」という雑誌に載った論文では、スマホ依存症の女性は乳がんリスクが43%上昇すると報告されています。要因としては、座り過ぎと同様に、スマホを使い過ぎるとやはり睡眠時間が削られ、主に夜間に分泌され質の良い睡眠を促すホルモンであるメラトニンの働きに影響を与える可能性が推察されます。

 ちなみに、明るい部屋で寝る人は、真っ暗な部屋で寝る人と比較すると前立腺がんのリスクが2.8倍程度高くなるとの研究結果もあります。古来、人間は日の出とともに起き、日の入りとともに寝る生活をしていました。それに逆らい夜間も光を浴びると、サーカディアンリズム(体内時計)が狂い、自律神経やホルモンバランスが崩れ、がんになりやすくなるのだと思います。寝室は真っ暗にして寝るのがお勧めです。

 運動の話に戻ると、筋トレによるがん予防効果はさまざまに報告されていて、その要因の一つとして、少し前に週刊新潮さんでも特集されていた、筋肉から分泌されるマイオカインという健康ホルモンの働きが挙げられます。

 そしてなによりも、筋トレをして筋肉量が増えると、免疫で大事な役割を果たすリンパ球も増えます。がんの予防だけでなく、がんになってしまい治療をする際、とりわけ免疫療法においては、筋肉量が大きく結果を左右します。

次ページ:ズボラな人に朗報

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。