「HIVに感染していたんです…」 レイプドラッグを飲まされて“集団暴行”の被害に遭った日本人カップルの悲劇
前編【「彼女だけじゃなく、僕もズボンをはぎ取られ…」 アメリカ滞在中の日本人カップルを襲った「最強のレイプドラッグ」の悪夢】の続き
いま世界中で社会問題化しているのが、被害者に決して癒えることのない傷を刻み込む「レイプドラッグ」をめぐる事件だ。なかでも“最強のレイプドラッグ”の異名を持つ麻薬「GHB」が猛威を振るっている。そうしたなか、アメリカ滞在中に被害に遭ってしまった日本人カップルがいる。24歳のアリと恋人の蒼太だ。帰国後に相談を受けた筆者に、2人はおぞましい事件の詳細を語ってくれた。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】
【写真】ひそかに飲み物に混入する、注射器で無差別に刺す…日本人だけが知らない世界一危険な「レイプドラッグ」の使われ方
最初の相談から10日後に2人と再会した。私が勧めた通り、日本の病院で治療と検査を受けたようだが、2人とも明らかに意気消沈している。しばらくの沈黙の後、アリが口を開いた。
「病院ではとても親切に治療と検査をしてくれました。隅々まで診てくれて、必要な粘膜の採取にも協力しました。妊娠はしてなくて、骨折もなかった。でも……。クラミジアとHIVに感染していたんです。ショックで目の前が真っ暗になりました」
――そうか……。言葉に詰まってしまうな……。エイズの発症を防ぐ薬も進化しているので、先生方の指導を受けながらきちんと治療を進めよう。やはり加害者は許せないな。カルフォルニア州(オークランドを含む)では性犯罪前科者が登録されているという。専門の弁護士や関係機関に相談しながら対応策を考えて行こうと思う。もう一度順序立てて説明してくれないか。
「このバブルガム、効くぞ」
「オークランドの海辺にある薄暗い倉庫のような建物がパーティー会場でした。なかは3~4室に分かれていて、どこもライブハウスのような感じ。照明もあって臨場感が抜群でした。午後7時頃に、蒼太とイーサンと3人で倉庫に行って、入口で1人100ドル払った記憶があります。メインルームはすでに客の男女で溢れていて、流れてくるラップミュージックに身を任せて、体を揺らしながらアルコール飲んだり、ウィード吸ったり、その時点でもうハイになっていました。私たちが雰囲気に呑まれていると、イーサンのラッパー仲間の男が “これバブルガム(BUBBLEGUM)、効くぞ”とジョイント(※大麻タバコ)手渡してくれました。バブルガムは大麻の銘柄のひとつです。ヒップホップヘッズが好むと聞いていました。それを3人で吸って……、あっ、どうしよ」
アリはここで話すのをためらう。
――つらくなったのか、無理しないでいいから。日を改めようか
「違うの、この夜は色んなドラッグをやったし、隠語もたくさん知っているので……。ドラッグのベテランだと思われそうで」
――大丈夫、心配いらない。
「バブルガムの効き目は、ビートが弾けて脳の髄にまで届く感じ……。これで緊張がほぐれました。そこで“娘さんが熱を出した”という連絡を受けて、イーサンが帰宅することになったんです。でも、私と蒼太はもうしばらく残ることにして、長椅子のある小部屋へと移りました。すると、“What's poppin?(調子はどう)”といいながら、ピルボーイ(MDMA錠剤の密売人)がMDMAをセールスしてきたので2錠買いました。それを2人で1錠ずつ飲むと、20分もしないうちにほどよい高揚感を覚え、同時に周りへの親近感も高まり、みんなと踊れるようになりました。このとき“そうか、ドラッグパーティーだったんだ”とワクワクしたのを覚えています」
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