山尾志桜里氏インタビュー「勝ち負けではなく爽快な勝負を見せる必要があった」「もらってばかりだった自分を見つめ直しました」
爽快な勝負を見せる必要があった
――ではなぜ出馬を。
「逆に向こうから連絡を取ってきてくれた方も大勢いたのです。政治を志している人や挑戦した経験のある女性たちでした。『自分も辞退を迫られたことがある』『調整を迫られていたけれども、山尾さんの会見を見て怖くなった。もう政治をやめる』などといった、リアルな女性挑戦者たちの話を多数聞かせていただきました。間に人が入って、zoomでそういう女性たちの話を聞いてくれないか、みたいな話もありましたね。
両面から色々な人の話を聞いていく中で考えていくうちに、最後はここで筋を通して再起する姿を見せておく必要があるという結論に至ったのです」
――つまり、勝ち負けじゃなかったと。
「そうですね。勝機はあるとは思っていましたが、勝ち負けが全てではないと思っての決断でした」
――選挙が終わった後で出演されたABEMAの番組で、「内容よりも本気度を見せることが大事」とも話していました。
「政策重視の選挙戦を展開していたのですから、つい矛盾したことを言ってしまいました(笑)。ただ、あれも本音です。勝ち負けはともかく、爽快な勝負を見せる必要があった。あのような公認取り消しを受けた後でも、毅然と立ち上がる姿をみせたかった」
――山尾さんは今回の選挙で、「女性天皇の容認」を一番に掲げていましたが、他の候補者の公約に比べても票につながりにくい論点でした。なぜあえて不利にも思える戦略を取ったのでしょうか。
「キャッチフレーズポリティックスとか身近なワンイシューに全投入とか、真面目にこの国の未来を考える選挙が随分遠くなってしまったと、ずっと前から感じていたのです。最初に私が政治家を目指していた2007年くらいまでは、街のおじちゃんたちに選挙に出るんで応援よろしくお願いします、と声をかけると『じゃあお前の国家ビジョンはなんなんだ』と聞かれたものです。
しかし最近は、刺さるワンフレーズとか、私に入れたらあなたの暮らしがすぐに変わりますよ、みたいな聞こえのいい訴えばかりが溢れかえるようになりました。でも、本当にそうなのか。多くの人が生きていく中で、そう簡単に変わるようなことは現実にはないわけです。政治は幻を見せてなんぼ、という最近の傾向に対するアンチテーゼを示したかった」
――逆に戦略でもあったということですか。
「はい。マーケティングをしない選挙という戦略ですね。本気でこの国の土台を考えたとき、毎回選挙のたびに先送りされているイシューってなんだろうと考えたら、憲法と天皇論だなと思った次第です」
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