定年後「月に10万円」稼げるのはどんな仕事? 老後2000万円問題の不安を解消する「小さな仕事」
人生は長い。ましてや人生100年時代のいまは途轍もなく長い。そこで、健康と共に気になるのがお金の問題だが、老後資金だけでなく定年後も「稼ぐ」ことに目を向けるのが重要だという。年を重ねても無理なくできる仕事には果たしてどんなものがあるのか。【坂本貴志/リクルートワークス研究所研究員・アナリスト】
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定年後、自分は果たして豊かな生活を送ることができるのだろうか。役職定年を迎え、キャリアアップの道を終えた自分でも、再就職して“ちゃんと稼ぐ”ことはできるのだろうか……。
「失われた30年」といわれる厳しい経済状況で、こうした不安を抱えている方も多いことでしょう。ましてや、AI(人工知能)が日進月歩の進化を遂げ、仕事が「人の手」から離れていく中、現役世代ではない高齢者が出る幕はないのではないか、と。
しかし、それは杞憂です。定年後も豊かに過ごすために“ちゃんと稼ぐ”ことは十分に可能であり、悲観する必要はありません。実際、人手不足の実態は深刻で、「人の手」に対する需要はむしろ高まっていて、後述する定年後の「小さな仕事」の賃金も上昇傾向にあり、条件はどんどん良くなっています。
取得困難で特殊な資格が必要というわけでもありません。すでに高齢者の就業者が一定数以上いる、つまり高齢者でも働きやすい。これを前提とした場合に限っても、実に「19業種、100職種」もの選択肢が、定年後の皆さんの前には広がっているのです。
〈こう話すのは、リクルートワークス研究所の研究員・アナリストである坂本貴志氏だ。
労働市場の動向などの分析を専門とし、とりわけ高齢期のキャリア・働き方などの調査を行っている坂本氏は、65歳以上640万人のビッグデータの解析を行うとともに、自ら100人超のシニア就労者へのヒアリング・インタビューを重ねてきた。
「高齢者が働くということ」を分析・研究し続けてきた坂本氏が解説する。〉
定年後も一定の収入を得ることの方が重要
まずは、令和の時代における定年後の生活の現実について説明したいと思います。
「老後2000万円問題」のインパクトが大きく、かつ物価上昇も進む中で、定年後の生活に金銭的な不安を感じている方が少なくないかと思います。そして、その不安は、「一体、老後資金はいくらためておけば安心なのか」から来るものであることが多いのではないでしょうか。
確かに、この観点から考えると不安は尽きません。なにしろ人生100年時代であり、70代で亡くなるのか、それとも100歳まで生きるのかは誰にも読めず、どれだけ貯金しておいても老後資金を“食いつぶしてしまう”心配がある。金銭的に余裕をもって定年後の人生を過ごせるかどうかの最大のリスクは、自身の「長寿」にあります。
しかし、これは老後資金、つまり「ストック」にしか視点を当てていないことから起こる不安ともいえます。人生100年時代においては、ストックではなく「フロー」、すなわち定年後も一定の収入を得ることの方が重要だと思います。生涯において収入を得るための手段としてまず考えたいのは、無理のない範囲で年金を繰り下げて受給するという選択肢です。受給を1年遅らせるごとに受給額は8.4%ずつ上がっていくため、フローがさらに増え、老後資金を食いつぶす不安はより少なくなります。
そのためにも、現実的に、定年後に一定の収入を稼ぐ必要があるでしょう。ここで問題になってくるのが、冒頭で触れた“ちゃんと稼ぐ”をしっかりと定義することです。
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