定年後「月に10万円」稼げるのはどんな仕事? 老後2000万円問題の不安を解消する「小さな仕事」

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「生きがい」にしなくても

 孤立・孤独対策、あるいは認知症対策として、自宅と職場以外の「サードプレイス」を確保することの重要性がよく説かれます。ゆえに、定年後に何か趣味を探したり、サークルに参加したりするべきだと。無論、そうできればベストなのでしょうが、現実的には、一から趣味を見つけたり、新たなサークルに飛び込んだりするのはなかなか難しいと思います。その意味でも、小さな仕事はちゃんと稼げる上に社会ともつながれ、多くの方の定年後の最適解になり得ると感じています。

 一方で、必ずしもみなが小さな仕事を定年後の「生きがい」にする必要もないと思います。私がインタビューしたシニアの中で、こういう方がいました。

 65歳から19業種の(9)、倉庫でピッキングのアルバイトをしている男性の話です。この方は週3日、1日5~6時間勤務し、9万円弱の月収を得ていて、事前に言えば労働日程も調節できる、比較的自由で無理のない働き方をしています。

 そして鉱物好きなため月に数回博物館でも働き副収入を得て、さらに趣味であるアイドルグループの応援を楽しんでいる。この方の場合、小さな仕事を定年後の生きがい、自己実現の手段にしているわけではありません。つまり、小さな仕事はあくまでちゃんと稼ぐためのもの、と割り切るやり方もあるのです。

適度な緊張感

 定年後の社会との接点を求めてボランティアをするのも一つの手ですが、資産を食いつぶす心配を払拭するという点から考えた場合は、やはりまずは小さな仕事で稼ぐことを優先するべきだと思います。

 例えば19業種の(16)、小学校の用務員として働いているあるシニアの男性は、ボランティアではなく仕事なので、「今日は休んでもいいかな」という甘えが出てこないことが、小さな仕事のメリットであると私のインタビューに語っていました。ちゃんと稼ぐことに加え、このように適度な緊張感を持つことも、高齢期の生活、シニアの健康にとってはとても大切なことでしょう。

 収入、自由度、やりがい、緊張感……。「定年後の仕事」をどう選ぶか、また、厚生年金にいつまで加入するか、そして年金をいつからもらうかなどは、とどのつまり、人生100年時代の「定年後の生き方」を選択することに他なりません。そして、仕事に対するモチベーションを現役時代からマインドチェンジすることさえできれば、その選択肢は実に多様であり、過度に悲観的になる必要はないと思います。

坂本貴志(さかもとたかし)
リクルートワークス研究所研究員・アナリスト。1985年生まれ。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「月例経済報告」の作成や「経済財政白書」の執筆を担当。その後、三菱総合研究所を経て現職に。『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)、『定年後の仕事図鑑』(ダイヤモンド社)などの著書がある。

週刊新潮 2025年7月24日号掲載

特別読物「老後2000万円問題の不安を解消 月10万円稼ぐ『定年後の仕事』完全ガイド」より

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