「運動が大腸がんのリスクを下げるのは”確実”」 筋肉から分泌される天然の万能薬「マイオカイン」とは
「運動不足はパンデミック」
言わずもがな、筋肉から分泌されるわけですから、筋トレなどの運動をし、筋肉を刺激して鍛えればいい。マイオカインは、運動時に瞬間的に分泌されるだけでなく、運動を継続することで“質のいい筋肉”を作ると、ジワジワと分泌されるように体質が改善されていきます。従って、日常生活に筋トレを取り入れることが望まれます。
なにも筋骨隆々になる必要はありません。例えば、マラソンランナーの筋肉は決して太いわけでも、大きいわけでもありません。しかし、日々の運動によってエネルギーの発電所ともいわれるミトコンドリアが筋肉内に増えるなどし、持久力があり、疲れない筋肉、つまり質のいい筋肉になっています。このように、運動を習慣化し、質のいい筋肉を作り出すことで、多くのマイオカインが分泌されやすくなるのです。
それでは、どのような運動、筋トレが必要となるのか。まず前提として、運動不足の実態について説明したいと思います。
全世界的に見た場合、死亡危険因子の1位は高血圧、2位は喫煙、3位は高血糖で、4位が身体活動の不足となっています。「運動不足は、もはやパンデミックである」と警鐘を鳴らす専門家もいるほどです。
日本に限って見ると事態はより深刻ともいえます。厚生労働省の調査では、病気(非感染性疾患)による死亡危険因子の1位は喫煙、2位は高血圧、そして3位に身体活動の不足が位置しているからです。
この深刻な運動不足の解消に向けて、まずは座位行動を減らすことが求められます。座り続け、体を動かさないという時間をとにかく減らす。
衰えやすい三つの筋肉
次に、文字通り運動をすることが大切です。ポイントは「2種類の運動」を取り入れること。ジョギングのような有酸素運動と、そして筋トレです。もちろん、どちらもやらないよりはやるに越したことはありませんが、どちらか1種類を行うだけでは50点で、両方を実践することで初めて100点の運動になるといえます。
具体的に、厚労省のガイドラインで推奨されているのは、成人の場合1日60分以上(約8000歩以上)、高齢者であれば1日40分以上(約6000歩以上)の歩行に加え、週2~3回の筋トレです。
私が筋トレでお勧めしているのが、三つの筋肉のトレーニングです。太もも、腹筋、上腕三頭筋。この三つの筋肉は、加齢に伴いとりわけ衰えやすいとされているため、まずはこれらを重点的に鍛えるのです。また、1カ所の筋肉だけを鍛えてしまうと、強くなった筋肉にその他の筋肉が引っ張られてバランスが悪くなったりするので、上半身、下半身共に鍛えることが重要になり、この点からも三つの筋肉を鍛えることが望ましいと考えています。
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