「トランプ政権」発足で仕事を失いアメリカから日本へ 中国移民の新たな形「二潤」の実態を追う

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「アメリカは危ないが、日本なら安心」

 留学生界隈でも同様の動きが見られる。首都圏の有名大学大学院で働く教授は、「アメリカの有名大学卒で受験を希望する中国人学生が増えてきた」と話す。今や出願数の中に占める中国人の割合は7~8割に達する。そうして入学してきた学生が共通して言うのは、日米のコスト面での差、日本の地理的近さ、そして卒業後の就職のしやすさだ。

 実際に、アメリカの大学卒で日本の早稲田大学大学院に在学中の女性によると、アメリカの年間の学費と生活費を合わせて8万5000ドル(1200万円強)かかったが、日本では合計でもせいぜい5万ドル(700万円強)ほどだ。オンライン指導を受けたので、院試の準備もスムーズにいったのだそうだ。また、親戚は、「アメリカは危ないが、日本なら安心」と太鼓判を押していた。

「米国留学当初はアメリカで働きたかったのですが、文系だとたとえ仕事が見つかっても就労ビザの取得が難しかったんです」と話す。とは言っても、中国に帰国するのは避けたかった。中国国内の給料は低く、経済状況も悪化していた上、院試には政治科目の対策も必要だったからだ。そんな中で浮上したのが、日本という選択だった。

 別の米国大学院卒の中国人男性も、日本のコンサルティング会社でまずはインターンをし、その後入社することになった。「アメリカではビザの抽選が2回しかなく。文系だと1年猶予が与えられるんですが、やはり厳しいです」と言う。

 アメリカでは、STEM(科学・技術・工学・数学の4分野)以外の専攻だと、卒業後に与えられるOPT(専門実習ビザ)は1年間しかない。その1年の間に抽選でH-1B(専門職向けの就労ビザ)を取得できなければ、同国に滞在し続ける選択肢は非常に限られてしまう。さらに、トランプ政権下では、さらなる厳格化の兆しも見えてきている。

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