「トランプ政権」発足で仕事を失いアメリカから日本へ 中国移民の新たな形「二潤」の実態を追う

国際 中国

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 近年、日本に移住する中国人が増えている。しかし、その実態をつぶさに観察していると、これまでとは違った形の「流入」があることがわかるという。そうした中国新移民の実態を『潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)としてまとめた気鋭のジャーナリストが、今度は「二潤」と呼ばれる新たな“変化”に迫る。【舛友 雄大/中国・東南アジア専門ジャーナリスト】

増加する「二潤」

 中国の国内状況悪化を受けて、日本へこれまでとは異なる層の中国人が移住してくるようになってきている。海外で“より良い暮らし”をするという意味の隠語「潤(ルン)」も日本で少しずつ定着するようになってきており、政界でもビザ要件の厳格化や不動産取得規制が議論されるようになってきた。

「潤」は流動的な動きでもあり、ある国に「潤」した後でまた別の国に移住するパターンもある。「二潤」(アァルン)と呼ばれる動きだ。米中対立の激化や第二次トランプ政権の発足で、アメリカから日本に移る中国人も増えつつある。

 その典型例が風刺漫画家の辣椒(ラージャオ)さんだ。元々は2014年の日本滞在中に、中国のSNSやキャッシュレス決済のアカウントが凍結され、中国の官製メディアが一斉に「漢奸(裏切り者)」と批判記事を掲載したことがきっかけで、半ば亡命する形で日本で暮らし始めた。その後、2017年には渡米し、RFA(ラジオ・フリー・アジア、米国政府系放送局)でグラフィックデジタルアーティストとして勤務し、中国を含む各国ニュースのイラスト制作を担当していた。だが、トランプ大統領は今年3月にRFAなどを抱える政府機関の閉鎖に向けた措置をとった。

 辣椒さんは、コンテンツ系の仕事を念頭に、現在、大阪への再移住を計画している。生活コストの高いアメリカで良い条件の仕事を探すより、もともと友人の多い日本の方が生計を立てやすいとの発想からだ。

 アメリカから日本への「二潤」は第二次トランプ政権の発足以後、私の周りでもよく聞くようになった。

 長年カリフォルニアで教育事業を行ってきた中国出身の高齢男性は、日本食のファンで、引退先として日本に引っ越す予定だと話す。また、別の中国出身の著名芸術家も、アメリカで不動産を所有しているにも関わらず、東京への移住を計画中だという。その名前を調べてみると、文化大革命の中国を生き抜いた女性画家であることがわかった。シリコンバレーで働く中国人が、よりライフスタイルの洗練された東京に移ってきているという話もよく聞く。

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