“薬物をキメた恋人”がナイフで自分の太ももをメッタ刺しに…まじめで成績優秀な「女子大生」はなぜ人生をやり直せなかったのか?

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“悲劇の連鎖”は続く

 それから暫く経ってのことだ。なんと今度は「ジョン(John)」が死んだというのだ。

「叔母と一緒に彼の母親に会ってきました。母親にお姉ちゃんの死を伝えて、可能なら彼に一目会って怒鳴ってやりたいと思っていたので……」

 沙紀さんはワシントンのホテルから母親に電話し、姉が亡くなったことや、挨拶したいことを伝えたという。すると母親は大慌てでホテルまでやってきたと。

「ジョンがドラッグを教えたからでしょ。ごめんなさい。天罰が下ったのか、ジョンも命を奪われました。つい先日のこと、盗難車両の中で遊び仲間と意識を失っているのを発見されたんです。死因は“偽オキシコン錠剤(フェンタニル含有)”の過剰摂取による呼吸不全。幻覚剤のPCPも検出されているって……。いつかこうなると思っていたけど,もうこれでいい、ジョンも楽になれたと思う。でも亜紀は違う。可哀そうに……。本当にごめんなさい」

 沙紀さんが最後にこう言った。

「瀬戸さん! 何でこうなるのでしょうか? この理解できない男と女のドラッグストーリーを記事に残してもらえませんか。こんな現実があることを伝えてほしいんです」

 なぜ彼女は命を絶たなければならなかったのか。第1回【「ウチの子は大丈夫」は通用しない“薬物依存”の悪夢…成績優秀で、家族に愛された「女子大生」が“最悪の選択”に至るまで】では、家庭環境に恵まれた女子大生を蝕んだドラッグの本当の恐ろしさを詳述している。

瀬戸晴海(せと はるうみ)
元厚生労働省麻薬取締部部長。1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒。80年に厚生省麻薬取締官事務所(当時)に採用。九州部長などを歴任し、2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任。18年3月に退官。現在は、国際麻薬情報フォーラムで薬物問題の調査研究に従事している。著書に『マトリ 厚生労働省麻薬取締官』、『スマホで薬物を買う子どもたち』(ともに新潮新書)、『ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図』(講談社+α新書)など。

デイリー新潮編集部

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