“薬物をキメた恋人”がナイフで自分の太ももをメッタ刺しに…まじめで成績優秀な「女子大生」はなぜ人生をやり直せなかったのか?
ベッドに縛り付けられた恋人
「人が変わったみたいになったお父さんの顔を見ていると辛くて悲しくて……。反対を押し切ってまで渡米して、その挙句にヒモみたいなジャンキー男に引っかかって薬物に手を出す始末……。“一体、私はなにしてんだろ。ダメだ、やり直そう”と決心して、全てを清算するためアメリカに戻りました」
ところが、亜紀さんの言葉に男は耳を貸さない。別れ話をしていると立て続けにディッパーを吸って裸足で外に走り出したそうだ。
亜紀さんが医療センターからの電話で駆けつけると、顔面の腫れあがったジョンがベッドの上に寝かされ、手足を拘束された状態で治療を受けている。そして、彼女の顔を見るなり、「アキ、これから日本へ出発だ!」と嬉しそうに話しかけてきたという。
傍にいた警察官からは、「駐車場のブロックに何度となく頭をぶつけていたので必要な措置として拘束している。ドクターの許可がでたら外すから心配はいらない。彼が正気に戻ったら親元へ帰すつもりだが、いずれ彼から事情を聞くことになる。ディッパーは本当に人を狂わせる薬だ。君は絶対にやるなよ」と釘を刺されたという。
「病院のベッドに縛り付けられているのに、嬉しそうな表情を浮かべる彼を見て、私は凍りつきました。一日も早く日本へ帰りたいという思いが募って、早々に退学と退去の手続きを済ませました。そして、彼の母に挨拶に行ったんです。彼女は日系人で日本語が話せます。すでに事情を理解していたようで“ごめんね、ハイスクールのときからジョンはドラッグで問題ばかり。別れなさい”と言ってくれて……。少しは安心しました。でも、彼もクスリの被害者なのかと思うとなんか哀しい気分になったのも事実です」
ブツブツと呪文を唱えながらナイフを持ち出して
――怪我はどうしたのかな。男の暴力なんだろ?
「深夜にやってきた彼に“絶対に帰国するから”と伝えると、すでにディッパーをキメていたようで。“ブツブツブーブー”と変な呪文を唱え出したかと思うと、いきなりキッチンナイフで自分の太腿を刺したり、切ったり……。完全に狂ってしまいました。怖くて逃げようしたところで揉めちゃって……。その時に怪我をしたのだと思いますが、はっきり覚えていません。でも、その瞬間に彼と私は完全に終わりました」
彼女は足を引きずりながらアパートを出て、物陰からと911番(アメリカの110番)している。パトカーが到着したときに彼の姿はなかったという。それを確認してから旅券とキャリーケースを持ち出して大学の女友達のところへ。そこから病院へも通い、ようやく帰国することができた。領事館には自身も薬物をやっていたことが負い目となって相談できなかったそうだ。その後、男の足取りは掴めていない。亜紀さんにはLINEのメッセージも、電話も全く届かないということだった。
亜紀さんが続ける。
「帰国後、妊娠していることが分かりました。授かった命なので産みたいです。でも、色んなドラッグやったし、今も睡眠薬を飲んでいるので……」
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