介護のプロが親の介護をしない理由とは 「親への虐待に発展してしまうケースも」
プロの手を借りるのも介護
子どもが直接親の面倒を見ることだけが介護ではありません。親と距離を置き、プロの手を借りるのも立派な介護であり、むしろそのほうが親にとっても良質な介護が受けられて幸せに過ごせる場合が多いのです。
そして、子どもが直接介護するのではなく、親を施設に入れるのであればその下見をしたり、外部の力を借りる場合はどのようなケアが必要なのか、またそれは可能なのかを調べたりと、介護の体制を整えるために仕事を休むのが介護休業法の正しい利用の仕方なのです。
具体的には、まず「地域包括支援センター(以下、包括)」に早めに相談してください。包括とは、各自治体に設けられ、介護に限らず、福祉、健康、医療などの面で総合的に高齢者を支援する公的な窓口であり、さまざまなアドバイスをしてくれます。「自分(子ども)だけで親の介護を全うしようと思っていたけど、もう無理、限界」という切羽詰まった段階で相談しても、包括の職員は対応に疲弊し、打てる手も限られてしまいます。
次に、包括に相談した上で、ケアマネジャー(介護支援専門員)を紹介してもらい、具体的なケアプランを一緒に考える。通所リハビリがいいのか、施設にショートステイするのがいいのか、さまざまなケアプランを考えてくれるはずです。
つまり、子どもは親の介護の「プレーヤー」である必要は全くなく、包括やケアマネジャーの助けを借りて親に本当にふさわしいケアを手配する「総合マネジャー」であればいいのです。
家族関係も破綻
例えば、それまで離れて暮らしていたのに、親を自分の住む家に呼び寄せ、プレーヤーとして直接介護を始めるのは絶対にお勧めできません。どうして介護が必要になるまで親子で別居していたのでしょうか。仕事の都合だったり、子どもの家庭環境だったり、親子関係だったり、それなりの事情があったはずです。それが、その親子にとっての「適切な距離感」だったのではないでしょうか。
にもかかわらず、親孝行のつもりで「介護同居」して距離をゼロにすると、結局は、子どもは親の介護に行き詰まり介護離職を余儀なくされる。親も、せっかくわが子が介護してくれているのだからわざわざ知らない人の世話になる必要はないと、介護のプロを含めた“第三者の介入”を拒んでしまったりする。そもそも、その介護には持続性がなく、いつか崩壊することでしょう。それは介護の破綻であると同時に、家族関係の破綻でもあり、親にとっても子どもにとっても幸福な状況ではなく、逆に親不孝といえるのではないでしょうか。
子どもが介護に専念するために仕事を休んだからといって良い介護ができるわけでも、親孝行になるわけでもない。本当に親孝行をしたいのなら、くれぐれも、介護休業法を“誤用”しないでください。
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