メッタ切りにした女性をつま先で蹴り「まだ生きているのか」…「西鉄バスジャック事件」少年法に守られた「17歳」残虐犯行の一部始終

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女の子に包丁の刃

「犯人は前の方に座っていて、数十秒おきに後ろを振り返っては、男たちが襲ってこないかと確認しているようでした。また、追尾してくるパトカーを気にして、後ろの窓のカーテンを開けさせたり閉めさせたりしていました」(C男さん)

「パトカーがバスと並走し始めると男は怒りだし“裏切りやがった。ちくしょう”と言ってシャツの胸ポケットから携帯電話を取り出しました。その電話は親から取ってきたと言ってました。男は電話に向って“拳銃を持ってきたら、女の子以外の人質は全員解放する”などと言ってました」(E子さん)

「あるトンネルに入ったとたん、犯人は“バスを止めろ。ドアを開けろ。男は全部前に来て降りろ”と命じました。男4人はバリケードの補助椅子を乗り越えて前に行きましたが、私たちが移動していくと、犯人は初めて女の子を抱き抱えて首に包丁の刃をあてて身構えました。おそらく男の集団が近づくので警戒したのでしょう」(C男さん)

「家内のことが心配でしたが、男を刺激したら良くないと思い、目配せだけして後ろ髪を引かれる思いで外に出ました」(B男さん)

助かったんだ

 以後、再びE子さんの証言。

「バスが奥屋PA(広島県東広島市)で停止したとき、男は私と私の友達に“ケガをしている人を前に運んで下さい”と言いました。その場で説得を始めた警察に対し、男は防弾チョッキの差入れを要求しており、それが認められたので、3人を解放することになったようです。私たちは3人を前に運び、最初の1人は私たちが抱えて窓から外に出しました」

「小谷SA(広島県東広島市)で停止したときには、男は“ここで休憩します。みんな寝ていいですよ”と言って電気を消しましたが、みんなは放心してボーッとしていました」

「ポータブルトイレ3つ、フライドチキン、お握り、スナック菓子と飲み物が差し入れられましたが、これは乗客の要望ではなく、犯人が勝手に要求していたものです。でも、長時間の監禁による緊張と疲労で、口にする人はいませんでした。特に脂っぽいフライドチキンなんか、食べられるはずないじゃないですか」

「外から警察の人が“女の人と子供を外に出してあげなさい”と言っているのが聞こえましたが、そのうちに、窓のところでの説得が始まりました。警察の人が“もう充分アピールしたから、いいんじゃないの”と言うと、最初は“聞く耳持たないです”と答えていた男も、説得が続くうちにだんだん警察の人のいうことを“ハイ、ハイ”と言って聞くようになっていきました。でも、“お巡りさんの言うことも分かるけど、まだやり残したことがあるので、時間を下さい”と最後に言っていました」

「突入の瞬間は突然やってきました。私は男に一番近いところにいましたが、ドンドンと窓を叩く音がして、怖い! と思ったら、窓が割れて人がいっぱい入ってきました。そして室内に煙が充満しまた。いったい何が起こったのか分からなかったのですが“取り押さえました”という声を聞いて、初めて、助かったんだと思いました」

 ***

 警察が突入したのは5月4日の午前5時3分、少年が逮捕されたのは5時5分。以上が16時間の詳細である。犠牲となった女性は元小学校教師で、退職後は佐賀市内で私塾を開いていた。

 では、このような残虐無比な犯行を行った少年はどのように育ったのか。彼をモンスターに変貌させてしまった家庭とは――。【後編】では、少年の生い立ちと、“その後”の姿について詳述する。

デイリー新潮編集部

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