メッタ切りにした女性をつま先で蹴り「まだ生きているのか」…「西鉄バスジャック事件」少年法に守られた「17歳」残虐犯行の一部始終
けだるい午後
佐賀市に住むC男さん(56)は、この日から始まった博多どんたくを見物に行くので、このバスに乗った。
「お客さんも大体が乗り慣れた方ですので、私を含めて8割くらいの方が眠り始めました」
D子さん(18)とE子さん(18)は友達同士。九州一の繁華街・天神に買い物に行くところだった。
「あのバスは天神に直行するので、列車より便利で、よく利用しているんです」
いかにも休日らしいこれらの乗客を乗せて、バスは、けだるい午後を北東に走り、九州道で福岡県に入った。
首のあたりに切り付け
「出発してから友達とお喋りしていて、30分くらいたったころ、突然前の方の席から“アー、アーッア”というような大きなわめき声が聞こえてきました」(D子さん)
「その声で目を覚まして窓の外を見ると、バスは鳥栖ICと太宰府ICのあいだを走っていました」(C男さん)
「と、次の瞬間、左側の前の方にいた男が包丁を振りかざして立ち上り“このバスを乗っ取る”と言いました」(E子さん)
「トーンが高く、まるで自分に言い聞かせているような、しっかりした口調でした。“荷物を前の方に持ってきて積み上げろ。客は全員後ろに移動しろ”と指示しました」(C男さん)
「“後ろに行けと言ってるよ!”という前の席の人の声で目が覚めました。何事かと思い前を見ると、若い男が肉切り包丁のようなものを振りかざして“後ろにつめろ。早くしろ。オレの言うことを聞かないと殺すぞ”などと指示している。運転手には“真っ直ぐに行け”と命令していました」(B男さん)
「主人の“起きろ”という声で目が覚め、前を見たら、そこに包丁を持って立っていたのは、あの青年でした」(A子さん)
「私と友達は後ろに移動して、また並んで座りましたが、私の前に座っていた女性は眠っていて男の指示を聞いていなかったらしく、一人、前の座席に残ってしまったのです。男はそこへやってくると“ふてくされてますね”と言って、いきなり首のあたりに切りつけました。そして“あなたたちが行くのは天神じゃなくて、地獄です”と言いました。男は、怒ると命令口調になりましたが、冷静な時はずっと敬語で喋っていました」(E子さん)
その後、男は男性客を窓側、女性客を通路側に席替えさせると、客の時計、携帯電話、ラジオ、上着を床に置かせて足でかき集め、窓のカーテンを閉めさせ、さらに、女だけを前の席に移動させ、男5人は後ろに詰めさせて、バリケード代わりに補助椅子を倒した。
「自分は運転手のすぐ後ろの席に座り、首だけこちらに向けて、いろいろと指示を出しました。メガネをかけて、敬語で話す、マジメそうな子でした」(E子さん)
「とても冷静で、有言実行で客に当たっていました。隣の友達と“ヤマダって、結構アタマ良くない?”と話したくらいです。ヤマダというのは、犯人がそう自称していたのです」(D子さん)
「前方に巨大な関門橋が見えたので、ああこれから本州に入るのだなと分かった以外は、今どこを走っているのか、目的地や犯人の動機が全く分からず、常に緊張していました」(C男さん)
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