「10年」かけて「全104曲」を完走! 日本一多忙な指揮者「飯森範親」が前代未聞のプロジェクト「ハイドンマラソン」の全内幕を明かす
実は「108番」まで……
〈ハイドンマラソン〉第1回の3曲をおさめたCDは、“国産ハイドンの名盤誕生”と、話題になり、「レコード芸術特選盤」(2017年1月号)に選出された。筆者も、これを聴いたときの新鮮な感動は、いまでもおぼえている。特に、3曲中、真ん中に挟まれた第17番は、いかにもハイドンらしい、明快で元気いっぱいの演奏で、ワクワクした。朝の出勤時、駅までの途上、これを聴きながら歩いて気分を盛り上げたものである。ライヴ録音とは思えない、素晴らしい音質だった。
実は、このCD全集のレコーディング・エンジニア、江崎友淑氏は、飯森マエストロと、桐朋学園大学時代の同級生で、長年の親友同士。配信偏重の時代に、あくまで高音質の“音盤”にこだわる、世界的なエンジニアである。
「おそらく、ハイドン全104曲を、ひとりで手がけたエンジニアは、彼が世界初でしょう。長年の付き合いなので、お互い、いいたいことをいいあって、仕上げてきました。そういえば、このCD全集、ジャケットのカリグラフィ(デザイン描き文字)は、わたしの手になるものです。指揮者自身のカリグラフィとしては、これも世界初かな?(笑)」
指揮のみならず、CDのデザインまで!
最後に、全104曲を“完走”した瞬間、なにを思ったか、聞いてみた。すると、かすかに笑って……
「頭をよぎったのは……第105~108番を、どうしようかな、ということでしょうか」
ええ!? 「全104曲」じゃなかったんですか?
「実は、基本分類であるホーボーケン番号に従うと、全104曲なんですが、その後、“これも交響曲では?”といえそうな楽譜が、4曲、見つかっており、便宜上、第105~108番ということになってるんです。これを、どうしようかな、と……」
コンサートもCDも、もう1回(枚)ずつ、増えるかもしれない。
(一部敬称略)
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