気づけば街中に「整体」「もみほぐし」「リラクゼーション」の看板…女性客が“おなら”よりも気にする“悩み”について施術側はどう考えているのか

  • ブックマーク

ハラスメントに対峙しやすい業界

 いわずもがな、「施術業」は完全なる客商売。そのため、カスハラやトラブルに遭いやすい職業の筆頭でもある。

「効果を感じられないからという理由で、支払いを渋るお客様がいる」(カイロプラクター)

「タイマーをセットして時間いっぱい施術をしているのに『2分短い』といって喚き散らす方がいました」(もみほぐし施術者)

 さらに、こうした手に職系の仕事ではよく聞く話だが、「友人知人からの依頼だとお金を払ってくれなかったり、値下げを当然だと思われたりする」という声も。

 最も多かったのが「セクハラ」に関するトラブルだ。

「一般的なリラクゼーション施設なのに、男性客から性的なサービスを強要されることがある」(もみほぐし施術者)

「男性客からはあり得ない要求や行為(局部を露出するなど)を受けることがあります。閉鎖的な空間で2人きり、しかも監視カメラなどもないので毎度怖い思いをします」(アロマセラピスト)

 一方、男性施術者の場合、客からセクハラだと訴えられてしまうケースも少なくない。

「患部以外の場所に触れないといけないことがあるので、こうした説明はしっかりします。男性施術者として、特に女性のお客様には触れる部分を細かく確認するようにしている」(あん摩マッサージ指圧師)

 しかし、こうしたセクハラは、なにも男性客・男性施術者から女性施術者・女性客に対してのみ起こるものではない。今回の取材では、男性の施術者が「性的な要求をされることがある」とする人もいた。

 直接人の肌に触れる場なうえ、リラクゼーションという心身ともに解放されやすい環境下では、セクハラ対策は今後も強化していく必要があると言えるだろう。

施術者あるある

 最後に本連載恒例の「職業あるある」を聞いてみた。

「『自分がもう1人いたらな』と思います(同じ施術を自分で受けたい)」

「疲れた日は家族にマッサージしてもらっている」

「大柄な人からは追加料金を取りたい。施術で体力を消耗するので」

「華奢な人よりも、中肉中背で筋肉や脂肪が柔らかい中年の女性のほうが施術しやすい」

「爪は絶対短くしておかないといけないが、缶を開けられなかったり、シールをはがせなかったり、痒いところを掻いても気持ちよくなかったりと、とにかく日常生活が色々やりにくい」

「深爪してしまった時、親指に体重をかけるとすごく痛い」

「年末年始などに実家へ帰省すると、おじいさんおばあさんの施術大会が始まり、ある意味普段の仕事より忙しくなる」

「施術中、お客様が眠ってしまった時は少しずつ力を強めて起こす」

「不妊の方などへ鍼灸施術をしても、途中で来なくなった方は無事妊娠されたのか、またその他の病気でも軽快して来なくなったのか分からず悶々とすることがある」

 自分の不調を解消しに行って、現場ではたらく人たちを不調にさせるようなことはあってはならない。心からリフレッシュするには、そこで働く人との信頼関係の構築が必要不可欠なのだと彼らの話を通じて強く思う。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。