「実子がいるのに、夫婦養子に儀式を…」 琉球王朝「尚家」のお家騒動、何が起きているのか

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王朝の祭事に進んで出席するように

 圭子氏の動きが活発になるのは、2014年に入ってからだ。尚本家や沖縄に関心の薄かった衞氏を従えて、王朝の祭事などに進んで出席するようになる。

 まず、伊是名島で2014年5月に行われた稲之穂祭(豊饒を祈願する祭ウマチー)で、圭子氏は、松堂氏に代わって自ら第20代聞得大君を名乗り、儀式の祭主を務めた。

 そして圭子氏と衞氏は、翌2015年4月初めに、尚本家の先祖が眠る国の重要文化財・伊是名玉御殿(同島)で催行された公事清明祭に初めて参加する。その翌年も、翌々年も同様に参加したのである。

 そして2018年、伊是名玉御殿での公事清明祭に参加した後の4月6日、祭主として初めて玉陵の御清明祭を司(つかさど)った。これについて、地元メディアは、次のように伝えている。

「第二尚氏王統の尚本家の清明祭が6日午前、沖縄県那覇市首里の玉陵で開かれた。第23代当主の尚衞さん=岡山県=を始め一族7人、来賓25人が参加し、琉球王朝時代の清明祭を再現した。/衞さんによると、尚本家の玉陵での清明祭は約40年ぶり。衞さんは、来年以降も開催する考えを示した」(2018年4月6日付「琉球新報」)

 これには、血のつながった子息の猛氏も参加している。このとき、衞氏は自力で祭器をそろえられなかったため、首里城公園を管理運営する沖縄美(ちゅ)ら島(しま)財団の祭器を借りようとしたが、貸し出しを拒絶され、急きょ伊是名村から祭器を取り寄せて儀式は執り行われた。

衞氏と猛氏のあいだにも亀裂が

 片や、長年この祭祀を主催してきた金武御殿は別の日に催行している。いわば分裂開催となったのである。

 圭子氏・衞氏は、以前から金武御殿主催の御清明祭が不満だったようで、この年の御清明祭の前に、圭子氏は「祭祀道具がそろってない、どうして仕立て直さないのか」と言って金武御殿を叱責している。同御殿幹部は、「多額の経費がかかるので祭器の新調はできないが、伝統的な作法は守っている」と反論したが、衞氏からも呼び出され、「今まで金武御殿は何をしていたのか、お役御免だ」と怒鳴られたという。

 メディアは、圭子氏・衞氏の御清明祭の成功を伝えたが、御清明祭をめぐって、圭子氏・衞氏と金武御殿とのあいだに大きな亀裂が生じていたのである。

 翌2019年4月の御清明祭も、圭子氏・衞氏と金武御殿の分裂開催となった。衞氏の子息・猛氏は、野村氏らに正統性を見いだしたのか、金武御殿の御清明祭に出席している。その後、コロナで現地には行かれなくなったが、猛氏は金武御殿の御清明祭に合わせ、東京から「遥拝」している。衞氏と猛氏のあいだにも亀裂が入ってしまったのだ。

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