「実子がいるのに、夫婦養子に儀式を…」 琉球王朝「尚家」のお家騒動、何が起きているのか

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政治家への野心

 沖縄のある神社関係者は、「満喜さんは、沖縄出身でもなければ、沖縄の言葉にも歴史や神事にも通じていない。満喜さんが尚王家の伝統的な神事を司れるとは思えません。言葉は悪いですが、たんなる“聞得大君ゴッコ”に終わるんじゃないか」とそっけない。

 ただ聞得大君就任後の満喜氏の活動には目を見張るものがある。「振興会」のホームページなどで発信される情報を見るかぎり、「尚本家の主役は私よ」といわんばかりの活躍ぶりだ。

 一方で、地味ながら、着実に「政治力」を発揮できる活動にも参加している。

 その一つが「片目失明者友の会」副代表としての活動である。久山公明代表に満喜氏のことを尋ねてみた。

「当会は私が2013年に一人で立ち上げた任意団体です。現在片目失明者は障害者に認定されておらず、こうした現状を変えるべく結成しました。お父様も義理のお父様(衞氏)も片目失明者だとのことで、満喜さんのほうから連絡が来ました。人柄もよく、義理のお父様が尚家の23代ということですし、神社関係に広い人脈をお持ちのご様子だったので、2年ほど前から満喜さんに副代表をお願いしています」

 さらにこう続ける。

「実際に友の会の相談役に三重の鈴木英敬衆院議員(自民党、前三重県知事)などを紹介していただきました。おかげで会が広がり、安定感が出てきました」

 では、満喜氏とは一体どんな人物なのか。

「かつて政治塾へ行って勉強されたとも聞きました。政治家への野心はお持ちだと思います」

「王様」の風格

 衞氏の守護神だった野津圭子氏同様、満喜氏がなんともたくましい女性に見える。衞氏は、その「たくましさ」に焦がれて養子にしたのではないか?

 ことの真偽を確かめるため、本誌(「週刊新潮」)編集部は、衞氏並びに満喜氏にたびたび取材を申し込んだが、弁護士を通じて拒否された。

 他方、衞氏の子息である猛氏は、「これまで玉陵で行ってきた金武御殿とともに、先祖をお祭りする御清明祭を守っていきたい。沖縄に行くことができれば参加するし、無理なときは東京で遥拝したい」というコメントを寄せてきた。

 10代で米国に置いてきぼりにされるという苦い経験を乗り越えてきた猛氏のほうが、衞氏よりはるかに「王様」の風格があるようだ。那覇在住の尚勇(いさむ)氏(尚泰の子・尚時の末裔)も猛氏に大きな期待を寄せている。

 現在のところ、衞氏と、猛氏・金武御殿の両者が和解する気配はまるでない。

篠原 章(しのはらあきら)
評論家。1956年山梨県生まれ。経済学博士(成城大学)。大学教員を経て評論活動に入る。主なフィールドは音楽文化、沖縄、社会経済一般で、著書に『沖縄の不都合な真実』(大久保潤との共著)、『外連の島・沖縄』などがある。

週刊新潮 2024年1月25日号掲載

特別読物「実子がいるのに夫婦養子を迎え『祭祀』を始めた琉球王朝『尚家』のお家騒動」より

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