結婚式の引き出物が「売行き10万部」に! 著者に聞く“万葉集の超訳本”の裏側
古典の現代語訳本は数多あれど、「万葉集」の超訳モノが大ヒットしようとは、当の著者も想定外だった。昨年秋の刊行以来、売行きは10万部目前。だがもともとは、自身の結婚式で手土産として提供する“粗品”扱い同然だったというのだ。
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【写真】自身の訳が不興を買うのを恐れ「ひっそりと本を出そうと」と語る佐々木さん ほか
題して『愛するよりも 愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①』(万葉社)は昨年10月に発売、今年に入って売行きが伸び、4月には9万部にまで到達。5月から6月にかけても大手書店で売上げが単行本部門2位につけるなどしている。
著者は佐々木良さん(38)。出版社「万葉社」の社長でもあるが、他に従業員はおらず佐々木さん一人の会社だ。
これほど話題になっているワケはズバリ、その大胆な超訳ぶりにある。
《くんのかい? こんのかい! こんの? くんの? いや こんのかい!》
漫才のボケに対するツッコミさながらだが、本歌はエリート官僚・藤原麻呂(ふじはらのまろ)からのプロポーズがないヤキモキした胸の内を女流歌人・大伴坂上郞女(おおとものさかのうえのいらつめ)が詠んだコレ。
《来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを》
現代流のSNS用語も駆使して訳された歌もある。
《あんたに別れ話をされた時 「ほな別れたるわ!!」って 即レスしたけど 正直やってもうた! て思てる》
元カノから元カレへの歌だが、本歌はというと、
《白栲(しろたへ)の 袖の別れは 惜しけども 思ひ乱れて 許しつるかも》
これはほんの一例で、歌によっては現代語訳に“ハッシュタグ(♯)”や“いいね!(♡)”の数が付いていたり。
また、《よき人の よしとよく見て よしと言ひし》というような韻を踏む歌などは《yo! よい人が yo! よく見て yo! よしっ! っていった yo!》というラップ調に訳されている。
基本的に訳は奈良弁だ。理由は当時の都が奈良で、歌の多くは奈良の作者によるものと考えられるから。訳に若者言葉が頻出するのも、かつて詠み人に若い人が多かったからだ。
6世紀後半~7世紀後半に編纂された現存する日本最古の歌集が、1300年の時を経て、現在、日常的に使われている普段着の言葉で表現された。本書は万葉集の中でも恋歌を中心に90首を収録するが、それらをちょっとポップな現代語訳で読み返すと、恋のときめき、切なさ、失恋、嫉妬、恨みは、今も昔も変わらないことに気づく。
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