ミャンマー サイクロン上陸から1カ月 国軍が救援ボランティアを禁止、物資輸送費徴収に非難殺到

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 6月8日、ミャンマーの国軍は、サイクロンで被災した人々への救援を担うNGOやボランティアの活動をすべて禁止するとの通達を出した。

 大型サイクロン「モカ」がミャンマー南西部のラカイン州を襲ったのは5月14日。雨に加え、風速50メートルを超える風に晒され、多くの家が屋根を飛ばされ、倒壊。ライフラインもストップした。被災した人々は約540万人にのぼり、そこには約300万人の貧困層が含まれているといわれる。

 それから約1ヵ月。食糧や水の救援は遅れ、ライフラインの復旧も進まない。背景にあるのは、救援を担うはずの国軍の問題だった。

 サイクロンが襲った直後から、国連や世界各国は緊急救援の声をあげた。物資はヤンゴンに届きはじめたが、それを被災した人々に渡すスタッフにラカイン州までの移動許可を与えるのを、国軍は渋っているからだ。

過去に似たような例も…

 国軍は2021年、クーデターを起こし、政権を担っていた国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー氏らを拘束し全権を握った。 国軍は抵抗する民主派勢力を弾圧し、反旗を翻す少数民族の軍隊と激しい戦闘を繰り返している。犠牲になった民間人は2,900人を上まわり、拘束されている政治犯も1万3,000人を超えている。被災したラカイン州は、国軍と敵対する少数民族のラカイン族の軍隊、アラカン軍が広いエリアを支配している。国軍は主要な街を抑えているにすぎない。

 国軍はその現状が知られることを怖れ、国際援助組織が活動することで、抵抗勢力が活気づくことを警戒しているといわれる。

 国軍がクーデターを起こす前までの10年間、ミャンマーは民政化の時代だった。それ以前も軍事政権だったが、今回のサイクロンと同じようなことが起きている。2008年、ミャンマーをサイクロン「ナルギス」が襲った。この時、当時の軍事政権は、海外からの人的支援を拒否している。

 既得権を守るために孤立の道を進むのはミャンマーの軍事政権の特徴といえる。民主派を武力で弾圧する構造のなかで多くの国民が命を落とす。そして経済は低迷し、人々は仕事を失い、世界の最貧国に沈んでいく。今回のクーデターを起こした国軍トップのミンアウンラインは、「我々は少ない友好国とやっていくことに慣れている」とまでいっている。

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