「スマホ依存」で子供の眼球が変形? 10人に1人が失明予備軍との試算も スマホ失明から身を守る方法

ドクター新潮 ライフ

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単なる脅しではない近視患者の爆発的増加

 実際、アメリカの眼科学会は、20年時点の近視患者の数が26億4千万人、強度近視の患者数が4億6千万人にのぼったと公表しています。近視患者の爆発的増加は単なる「脅し」ではなく、現実に起こっているのです。

 今では「失明」は特殊な病気ではなく、「近視」、「強度近視」という段階をたどって誰にでも起こり得る危機として存在している。それはあたかも階段状に連なった岩場を水が流れ落ちていく「カスケード」のようなもの。ひとたび流れに乗ってしまうと進行をくい止めるのはどんどん難しくなります。

 総務省の調査によれば、スマホを含むモバイル機器によるインターネットの平均利用時間は、10代の場合、12年時点で1日約76分でした。ところが、これが18年になると約145分と2倍近くに跳ね上がっています。もちろん増えているのは子どもの利用だけではなく、50代を見ても12年に約18分だった平均利用時間が18年には約53分と3倍近くになっている。つまり、われわれ日本人の多くも、知らず知らずのうちに「失明カスケード」の流れに乗ってしまっているのです。

失明の三つのレベル

 スマホ失明を回避するためには、もはや一刻の猶予も許されません。失明カスケードの流れを止めるためにも、まずはスマホ失明の原因と対策を正しく理解することが必要です。

 そもそも「失明」には三つのレベルが存在します。

 一つ目は、ものがまったく見えなくなり真っ暗闇の中で生活することになる、いわゆる「全盲」の状態です。これは「医学的失明」と呼ばれています。

 二つ目は、眼鏡やコンタクトレンズを使用した矯正視力が0.1を下回る状態。眼鏡やコンタクトを装着しても新聞や本などの文字を読むことができなくなり、街中の交通標識やお店の大きな看板すら判読できなくなってしまいます。外の世界はぼんやりとは見えているのですが、これでは社会生活を送ることはできません。これが「社会的失明」です。

 三つ目は、疾病などで一時的、あるいは部分的に見えなくなってしまう「機能的失明」です。例えば病名としては緑内障や眼球運動障害、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や重度のドライアイなどが挙げられます。機能的失明でも社会生活を送ることは困難になりますが、社会的失明と異なるのは見えにくい状態が固定化されているわけではないということ。この段階であればまだ視力が元に戻る可能性があるという点で社会的失明とは区別されます。

 ところが、機能的失明の状態を放置して、そのままの生活を続けていれば、社会的失明、さらには光を完全に失う医学的失明にもつながりかねません。これこそが「失明カスケード」の恐ろしさなのです。

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