1歳女児の米国心臓移植で「5億円募金」…なぜ海外の心臓移植はそんなにお金がかかるのか

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 心臓移植に円安で逆風──こんな記事が相次いで配信されている。代表的な2本を紹介しよう。1本目はテレ朝NEWSが12月8日に配信した「【独自】1歳女児の海外心臓移植 “5億円”募金達成へ…医師訴え『臓器提供に理解を』」だ。

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 特に読者の関心を集めたのは、以下の記述だと考えられる。

《日本国内と違い、アメリカでの心臓移植は保険が適用されません。そのため、直近の例では3億円から4億円の費用が必要でした》

《円安のあおりを受けて、その1・5倍、5億3000万円もの費用を用意しなければならなくなったのです》

 2本目はFNNプライムオンラインが12月19日に配信した、「追加請求が“3億円超” アメリカで心臓移植の維斗君 成功するも…父親が涙で“再募金お願い”」の記事だ。

 記事が注目されたのは、よりによってアメリカに滞在中、円安の影響で資金が枯渇するというトラブルが起きたからだろう。

《アメリカに渡る前、両親や支援者たちが募金活動を行い、当時の目標金額を上回る2億5100万円が集まった》

《しかし、歴史的な円安が起こった上に、渡米後の体調悪化で補助人工心臓を付けることになり、病院からは追加で3億円以上の請求があったという》

 もともと臓器移植の問題に高い関心を持つ人は多かったようだ。これらの報道をきっかけとして、SNSで様々な議論を展開している。

3~4億円は当たり前

 一方、「なぜ、これほどまで費用が高額なのか」という疑問も根強い。担当記者が言う。

「Twitterで検索すると、《なんでこんなに高額なのか? 内訳を知りたい》、《そもそもの話、高額すぎないか?》といった投稿が散見されます。なぜ心臓移植に億単位の資金が必要なのかと首をひねっている人は、かなりの数に達しているようです」

 こうした疑問の声につけ込み、悪質なデマがネット上で拡散している。その問題は後述するとして、どうして心臓移植の費用が高額化しているのか、基本的な事実から見ていこう。

 海外での心臓移植、特に患者が子供のケースでは、以前から手術費用が高額だったことは間違いない。

「臓器移植の啓発活動を行っている団体のホームページを見ると、《海外渡航移植では費用が3~4億円かかり募金活動が行われています》と明記されています(註1)。もちろん円安になる前の記述です」(同・記者)

 ネット上では《移植手術に5億円もの費用が必要とは考えられない。患者家族は差額を稼ごうとしている》といった事実無根のデマも乱れ飛んでいる。

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