1歳女児の米国心臓移植で「5億円募金」…なぜ海外の心臓移植はそんなにお金がかかるのか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

門戸を閉ざした各国

「子供を対象とした移植手術となると、さらにドナーは不足します。脳死状態の子供から臓器を摘出するわけですが、日本人は『脳死は本当の死ではない』、『脳死判定に不安を感じる』と考える人が、かなりの割合に達しています。子供の遺体にメスを入れることに反発を覚える人も少なくありません。何より最愛の子供を失った両親はショックが激しく、臓器提供を考える精神的な余裕などないケースが大半です」(同・記者)

 移植大国と言っていいアメリカでも、子供の心臓移植となるとドナー不足が顕著だ。

 ネット上では、《米国では、年間約350人の小児心臓移植が行われていますが、待機中に60~100人の患者が亡くなっています》とのデータが紹介されている(註1)。

「イスタンブール宣言により、これまで日本人患者の移植手術に門戸を開いていたヨーロッパの病院などが受け入れを停止しました。現状では、アメリカの一部の病院だけが患者を受け入れていると言って過言ではありません」(同・記者)

 経済学の観点から見ると、需要が旺盛であるにもかかわらず供給が減少すれば、価格は跳ね上がる。

「保証金」の高額化

 そして、アメリカの医療制度は「自由経済」の要素が強い。国民皆保険制度は存在せず、「高い医療費を払った患者が、優先的に助かる」傾向にある。

「アメリカで心臓の移植手術を受ける場合、当然、日本の健康保険は適用されません。また、アメリカの民間保険に加入しても、心臓移植は保険適用外のケースがほとんど。結局、手術費も治療費も、全額自己負担ということになります。おまけに小児心臓移植を成功させるような大病院ともなると、要求される費用も桁違いに高くなります」(同・記者)

 病院側が要求する「保証金」、いわゆる「前払い金」が高額化していることも大きい。その理由については、専門家でも見解が割れているという。

「アメリカの病院に向かっても、すぐに手術ができるわけではありません。普通は“順番待ち”となります。待機中も治療が続き、この費用も高額です。加えて、コロナ禍で外出機会が減り、交通事故で脳死状態になる人も減りました。ドナー不足が指摘されており、順番待ちの時間も長くなったと言われています。結果、治療費が増大し、比例して保証金も高額化したと指摘する専門家もいます」(同・記者)

次ページ:「心臓移植はビジネスだ」

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。