1歳女児の米国心臓移植で「5億円募金」…なぜ海外の心臓移植はそんなにお金がかかるのか

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レート、手数料、インフレ

 円ドルのレートを考え、《1・5倍、5億3000万円もの費用》は多すぎるのではないかと考えた人もいたようだ。

 今年の元日、1ドルは約115円だった。それが10月20日には約150円まで円安が進んだ。

 変動率は約130パーセント。にもかかわらず《1・5倍》が必要という報道は計算に合わないという指摘だ。

「金融機関で円とドルを交換する際は、為替市場のレートより悪い条件になります。例えば、12月21日の午後、1ドルは約132円でしたが、メガバンクの公示相場は約134円でした。加えてアメリカ国内は依然としてインフレが続いています」(同・記者)

 為替レートの変動、物価上昇分などを勘案すると、円安が進んだため当初の試算より「1・5倍」の費用が必要になったという報道も間違ってはいない。

 ネット上には《高額募金で患者家族はアメリカで豪遊》といった投稿も散見されるが、これも完全なデマだ。

「募金の使い道を公開しようという動きも出てきました。『もしレートが円高になって募金が余ったら、残額は別の募金団体に寄付する』という団体もあります」(同・記者)

ドナー不足の問題

 移植医療費の高額化は、円安になる前から進んでいたという専門家の指摘は多い。背景として挙げられるのは、2008年に国際移植学会が採択した「イスタンブール宣言」だ。

「臓器提供者(ドナー)は自分の国で確保すべきというのが宣言の骨子です。2000年代、開発途上国では臓器が売買され、他国の医療機関で外国人患者に臓器移植を行う『移植ツーリズム』が発覚、問題視されたことがありました」(同・記者)

 途上国では、本人が自分の臓器を売るだけでなく、親が子供の臓器を勝手に売るケースも珍しくないという。

「臓器売買が倫理的に間違っているのは言うまでもありません。こうした問題から『移植手術のドナーは自国で供給する』と明記したイスタンブール宣言が採択されました」(同・記者)

 日本でもドナーを増やそうと関係者は努力を重ねてきた。だが、なかなか成果は上がっていない。

 産経新聞の報道によると、《臓器移植希望者約1万5000人のうち、移植を受けることができるのは年2~3%にとどまる》という(註2)。

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