祖父と父から受け継いだものをゆっくり守り育てる――石渡美奈(ホッピービバレッジ社長)【佐藤優の頂上対決】

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 わずか20人ほどの会社でありながら、首都圏では抜群の知名度を誇るホッピー。戦後まもなくビールの代用品として誕生したこの発酵飲料は、幾度かの紆余曲折を経て、ヘルシードリンクとしてよみがえっていた。看板娘でもある3代目社長「ホッピーミーナ」が語る家業の来歴とこれから。

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佐藤 ホッピーのイメージは、一昔前とはずいぶん変わりました。私の父親の世代では代用ビールの代名詞でしたが、1960年生まれの私の世代になると、プリン体がないから痛風にならないとか、焼酎の割り材としてアルコール度数を調整しながら飲めるとか、健康と結びついた飲み物になっています。

石渡 プリン体はゼロですし、低カロリー、低糖質で、発酵食品でもあります。ビールと同じ麦芽とホップで作った発酵飲料ですが、アルコールは約0.8%、日本の酒税法上酒類に該当しません。だからいまは、ヘルシードリンクとして飲んでくださる方も多いですね。

佐藤 私は外務省に入省して1986年にイギリスに渡り、その後に8年間モスクワ大使館に勤務して、日本に戻りました。帰国してみると、居酒屋でホッピー、焼酎、そしてジョッキを冷やして飲む「三冷」が普及して、焼酎を「ナカ」、ホッピーを「ソト」と当たり前のように呼ぶようになっていました。一つの文化ができたな、と思ったことを覚えています。

石渡 もともとホッピーは、三冷で飲むものだったんですよ。ところが1980年代に、そんな面倒なことをせず簡単に飲めるサワーが出てきた。だからホッピーも、氷に焼酎をガバッと入れ、色づけ程度に注ぐような飲み方が広まってしまったんですね。それではホッピーの本当の味が伝わらないので、私は入社以来、ずっと三冷をお勧めしているんです。

佐藤 すっかり定着していると思いますよ。それからホッピーの良さは焼酎の味を壊さないことです。サワーは柑橘類の酸味に甘味を加えていますから、どんな種類でも同じような味になってしまいます。

石渡 そうかもしれないですね。

佐藤 その点、ホッピーは何にでも合い、邪魔をしない。2000年代に入ると焼酎ブームがやってきて、あまり香りのない焼酎だけでなく、特徴のあるさまざまな焼酎にも合わせるようになってきています。

石渡 私たちのお勧めは無味無臭の甲類焼酎ですが、いまは乙類でお気に入りの芋焼酎や麦焼酎を割る方もいらっしゃいます。またシャーベット状に凍らせた焼酎に入れる「シャリキンホッピー」も定着し始めていて、「彼は氷入り、私はシャリキン」という感じで注文していただくことも多くなりました。

佐藤 ホッピーには「黒」もありますね。これはいつ、発売されたのでしょうか。

石渡 1992年ですね。

佐藤 私の周りでは、黒をノンアルコールビール代わりに飲んでいる人がいます。黒ビールのノンアルコールはあまりないですから。

石渡 黒は炒った麦芽の香りが強いですから、それを好まれる方はたくさんいらっしゃいますね。

佐藤 私は、黒をあえて冷やさないで飲むことがあるんです。

石渡 常温ということですか。

佐藤 はい。イギリスではラガービールは冷やしますが、エールは常温でしょう。だから黒のホッピーも冷やさず、普通のホッピーとハーフ&ハーフにしたり、常温のまま焼酎を入れて飲むんです。するとエールを飲んでいる気分になる。これは邪道かもしれませんが。

石渡 ホッピーに邪道は一つもありません。もう「好き」と、召し上がっていただけるのであれば、あなた色に染まるのがホッピーですから(笑)。

佐藤 確かにどんなお酒とも、ぶつからないですよね。料理も和食、洋食、中華、エスニックと何でも合う。

石渡 いったいどうしてこんなに浮気性なんでしょう(笑)。どの分野の料理にも合いますし、デザートもいけます。ティラミスと黒ホッピーなんて、最高の組み合わせですよ。

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