45歳男性が送る、2人の不倫相手と崩壊した家庭の「三重生活」 そこで浮上する重大な金銭問題

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二重生活

 亮一郎さんはその日、リビングで寝た。翌朝は土曜日だった。彼が目を覚ますと妻はまだ起きていない。隣のベッドに自分がいないことを妻はわかっているのだろうかと不安になった。

「そのまま起きて食事の用意をしました。週末はだいたい僕が作っていたんです。子どもたちが起きてきたので食べさせていると、妻が起きてきた。『今日はみんなで公園に行こうか』と妻が言って子どもたちは大喜び。僕も行きましたが、妻は僕とは目を合わせない。会話もほとんどなかった。帰り際、『あなたは家族をどう思っているの? この子たちを捨てるの?』と痛烈な一言が飛んできました。すぐには答えられなかった」

 離婚はむずかしいかもしれない。亮一郎さんはそう思った。だが、麻紀子さんと別れることは「魂が死ぬことだと」思ったそうだ。

「思い切って、次の金曜の夜、麻紀子のところに泊まりました。土曜の朝、早く帰ってきて朝食を作る。つまり金曜の夜、僕は自宅にいない。そういう既成事実を作った。でも妻は何も言わなかった。土日は食事を作ったり、たまっていた洗濯物を片づけたりと、以前と同じように家事もこなしました」

 麻紀子さんには「離婚の下準備をしている」とすべて率直に打ち明けた。そうまでしなくてもいいのにと彼女はつぶやきながら彼に抱きついた。

 平日夜も週に1度くらいは麻紀子さんの自宅に寄ってから帰宅した。いつか妻が怒ってたたき出してくれればいいと思っていたが、妻は平然としていた。だが亮一郎さんとはいっさい口をきかなくなっていった。用があるときはSNSのメッセージを使い、急ぐときは子どもたちに代弁させた。

 そういうことも淡々と麻紀子さんに報告した。彼女は何も言わなかったが、それだけに彼は麻紀子さんに申し訳ない気持ちが強くなっていく。

「2年間、そんな生活が続きました。だんだん苦しくなってきたので、『もう限界だよ』と妻に告げました。するとその週末、朝から僕の親戚や兄弟、妻の両親までやってきて、大騒動になりました。みんなに責められ、最終的には妻が『出ていくなら家はもらう、ローンはひとりで払え、養育料は月10万』と宣言。家のローンと合わせて20万が消えていく。それでは僕は生活できません」

 結論は出ないまま親戚たちは三々五々、帰っていった。親戚が見てくれていた子どもたちが帰ってくる前、美保さんは「もういいわ、好きにして。その代わり、離婚届けにサインはしません」と言い放った。

「平日は麻紀子のところで、週末だけ自宅に戻るようになりました。変則的な生活だけど、子どもたちには平日は仕事だからと言い訳にならない言い訳でごまかしました」

 麻紀子さんは、そんな彼を受け入れてくれた。ギリギリのところで聞き分けのいい女性たちに救われたかっこうだ。

「ただ、麻紀子の無言の圧が少しずつ強まっていくのを感じていました。そりゃそうですよね。離婚もしないで転がり込んでいるんですから。生活費としていくらか渡してはいましたが微々たるもの。週末は自宅に戻る。こんな男をよく置いてくれたと思います」

 自虐的な言葉が増えていく亮一郎さん。確かに客観的に見れば、「なかなかのクズっぷり」と言われてもしかたがない。だが彼も引くに引けなくなっていたのだろう。

 そんな生活が続き、彼は少しずつ疲弊していった。そしてさらに責められてもしかたのない事態に自分を追い込んでしまうのだ。

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