ウクライナ危機の長期化が世界の多極化をもたらす アメリカでじわりと広がる悲観論

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 ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始してから半年が経った。多数の兵員と兵器を投入した両国の間の戦いは膠着状態になりつつあり、長期化する懸念が強まっている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は8月23日「ロシアの侵略との戦いに勝利し、クリミアを占領から解放することが必要だ」と表明するなど強気の姿勢を崩していない。

 ウクライナが徹底抗戦の姿勢を示す一方、ロシアも長期戦を辞さない構えを見せている。当初、短期での決着を目指していたロシアだが、侵攻が長期化した今、2014年から紛争が続いた東部ドンバス地方と同様、戦闘を続けることでウクライナを曖昧な立場にとどめておくことができるというメリットを見いだしているとの指摘がある(8月23日付日本経済新聞)。

 ロシアが長期戦に移行できた背景には、西側諸国が厳しい制裁を科したにもかかわらず、ロシア経済のダメージが小幅だったことがある。ロシアの今年第2四半期のGDPは前年比4%減となり、5期ぶりのマイナス成長となったが、落ち込み幅は予想されたほど大きくなかった。ロシア経済省は「今年のGDPは4.2%減にとどまり、当初想定したほど落ち込まない」との見通しを示している。堅調な資源輸出がロシア経済への制裁の影響を和らげていることに加え、ロシアからの外国企業の撤退も下火となり、輸入されなくなった消費財などの国内代替が進んでいることが功を奏した形だ。

 楽観できる状況ではないものの、プーチン大統領は「ロシアは長期戦に耐えられる」との自信を深めていることだろう。

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