ウクライナ危機の長期化が世界の多極化をもたらす アメリカでじわりと広がる悲観論

国際

  • ブックマーク

Advertisement

米国の嘆き節

 ロシアには長期戦を志向する別の理由があるのかもしれない。

 プーチン大統領は「米国主導の世界秩序は終わった」とかねてから主張してきたが、ウクライナでの紛争状態が長引けば長引くほど、米国一極集中時代の終焉の可能性が高まっているからだ。

 ウクライナへの軍事支援の総額は既に100億ドルを超えているにもかかわらず、米国政府は24日、ウクライナに対する約30億ドルの追加軍事支援を発表した。ロシアの侵攻開始以降で最大の規模であり、長期戦を見据えてウクライナを支援するとしている。

 だが、「ウクライナの反転攻勢」への期待をよそに、米軍関係者の間では「ウクライナ軍は精鋭部隊を既に失っており、武器を追加供与したとしても戦況を好転させることは不可能だ」との悲観論が流れている。武器の管理がほとんどなされていないことから、「米国がウクライナへの武器供与に費やした巨額なカネはアフガニスタンへの侵攻の時のようにドブに捨てるようものだ」との嘆き節も聞こえてくる。

 ゼレンスキー大統領が8月上旬に中国に対して救援の要請をしたことについて、米国メデイアが猛反発していることも気になるところだ。

 8月10日付米誌ニューズウィークは「ゼレンスキーの物語は変化しつつある」と題する記事を掲載した。同誌は、米国が国民の血税からウクライナに巨額の支援をしているのにもかかわらず、あろうことか、ゼレンスキー大統領が米国の最も危険な敵である中国共産党に救いを求めたことに憤懣やるかたないようだと報じている。さらに同誌はゼレンスキー氏のことを「腐敗した独裁者」と切り捨て、「ウクライナへの支援は米国の国益に害をもたらすばかりか、ウクライナ国民の窮状を悪化させるだけだ」と結論付けている。ウクライナ危機の下でも、分断化が進む米国は「一枚岩」になることができない。

次ページ:米国の立場に疑念

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。