もやしの乗った「浜松餃子」誕生秘話 元祖の店主は「形だけパクった餃子が増えすぎた」

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絶妙なニンニク

「きよ」のメニューは、餃子、焼き鳥、ホルモン焼きの3つのみ。メニューが少ないのは餃子専門店では珍しいことではないが、なぜ焼き鳥とホルモン焼きがあるのだろうか。渡辺氏が「ぎょうざ大」(15個1120円)とホルモン焼き(750円)を注文する。よく冷えた瓶ビールで喉を潤していると、キャベツの上にぷりぷりのホルモンが乗ったホルモン焼きが供された。甘じょっぱい味つけが病みつきになるウマさで、キャベツと交互に食べればビールがどんどん進む。

 カウンターの奥では加藤さんが注文を受けてから餃子の皮に餡を包み、熱々のフライパンに手際よく円形に並べていく。焼きあがったら中央に茹でもやしを添えて、「浜松餃子」スタイルが完成する。

 素材の味を噛み締めるためまずは何もつけずに一口。その一瞬で衝撃を受けた。かなりニンニクのパンチが効いているのに邪魔をし過ぎることなく、豚肉とキャベツの甘みが圧倒的に主役でじゅわっと脳に突き刺さる。かなり薄めの皮の焼き目側はパリッと香ばしく、全体としてその存在を主張しすぎることなく旨味を完璧に閉じ込めている。私には何よりニンニクを利かせながら、ニンニク特有のえぐみを一切感じさせない餡の配合が気になったので、恐る恐る加藤さんに尋ねてみた。

「ニンニクのバランスだって? いいところに気が付いたね。ウチのニンニクは青森の田子町でとれる最高級の福地ホワイト六片しか使ってない。中国産のニンニクとはもう全然違う。コクがあって味と香りが最高だから。僕は素材にこだわっているから八百屋さんに野菜を教えることだってあるよ。キャベツの水分量なんかは包丁を入れたらだいたいわかる。今の季節は群馬県産が良い、もう少ししたら茨城県産がおいしくなる。だから次は『群馬と茨城のいいキャベツを半分ずつ持ってきて』なんて注文もする。自分の性格として味に一切妥協しない」

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