我こそ日本ナンバーワン？ 開業150年、横浜を巨大都市にした「鉄道」の軌跡
廃止計画もあった「桜木町駅」
その中でも、とりわけ横浜市という行政が主体的に関与した横浜市交通局は、横浜市の発展と軌を一にしてきた。横浜市交通局の前身となる横浜市電気局は、1921年に私鉄の横浜電気鉄道を買収して誕生。横浜市は、このときを発足年に定めている。つまり、昨年は横浜市営交通100年という記念すべき年でもあった。
路面電車の営業範囲は狭いため、昨今では行政課題になることは少ない。しかし、明治から昭和戦前期にかけては違った。路面電車は市民の足そのものであり、生活に直結する政治案件でもあった。
東京市では、路面電車の運賃の値上げに市民が暴動を起こす騒動にまで発展した。騒動を収めるため、1911年に東京市は路面電車を市営化。同様の問題は横浜市でも起こり、1921年に路面電車は市営化した。
横浜市は横浜市電気局の初代局長に鉄道官僚の青木周三を迎えた。青木は後に横浜市助役に、そして横浜市長に就任。それほど市電は市民生活と直結していた。
横浜市が路面電車を市営化した2年後の1923年、関東大震災が発生。東京はもとより、横浜でも多くの建物が倒壊し、その後に発生した火事で横浜の市街地は灰燼に帰した。
鉄道当局は関東大震災からの復興に際して、発展が著しい横浜駅へと機能集約することを立案。開業当初、横浜駅として華々しく誕生した桜木町駅は、このときに廃止される計画が進められていた。
しかし、横浜市の政財界・市民の強烈な反対によって、鉄道当局は桜木町駅の廃止を撤回している。これは鉄道というインフラの重要性を、横浜市が理解していたエピソードといえるだろう。
高度経済成長期は全国の都市に自動車が溢れた。それは横浜市も例外ではなかった。道路の邪魔者として市電を廃止して、その代替として地下鉄の整備を進める機運が高まる。
[3/5ページ]
