我こそ日本ナンバーワン? 開業150年、横浜を巨大都市にした「鉄道」の軌跡

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横浜で高まる鉄道色

 鉄道系のミュージアムが、鉄道開業150年の記念イベントや企画展を実施して機運を醸成することは自然な成り行きといえる。そうした鉄道系ミュージアムとは別に、鉄道開業の地である横浜のミュージアムでもこぞって鉄道開業150年を盛り上げるイベントや企画展を連発している。

 我が国の鉄道は1872年に新橋駅―横浜駅間を開業したことを嚆矢とする。このときの新橋駅は現在の新橋駅ではなく旧汐留駅のことで、この地に駅が開設された理由は居留地に近かったからにほかならない。居留地とは、幕末期に外国人が居住することを許された土地を指す。

 一方、開業当初の横浜駅は現在の桜木町駅に該当する。横浜側に設置される駅が桜木町付近に選ばれたのは、開港場に近いからというのが理由だ。つまり、日本初の鉄道は東京側も横浜側も外国人の事情を考慮して決められた。

 汐留駅は1986年に廃止。その後は再開発事業によって一帯がオフィス街へと変貌を遂げる。歴史を継承するべく、汐留駅は一部を保存するとともに旧新橋停車場というミュージアムとして活用されている。

 桜木町駅は2020年に駅舎を改修。これにより、新たにJR桜木町ビルという商業施設が併設された。JR桜木町ビルは飲食店やホテル、ショップなどが並ぶ商業施設という位置づけだが、単なる商業施設ではない。

 施設内にはSLが保存されているほか、日本の鉄道史をまとめた解説パネルや貴重な品々を展示するミュージアム的な一面を有する。また、桜木町駅の構内にも鉄道発祥の地であることを意識した装飾や展示がなされている。

 桜木町駅を筆頭に、横浜市全体が鉄道色を強めている。それは、ひとえに鉄道が横浜発展の原動力になったからだ。

 先述した日本初開業となった新橋駅―横浜駅のJR線のみならず、横浜市内には東急電鉄・京急電鉄・相模鉄道・横浜市交通局(横浜市営地下鉄)・横浜高速鉄道(みなとみらい線)・横浜シーサイドラインといった鉄道会社が旅客営業をしている。そのほか、JR貨物や神奈川臨海鉄道といった貨物輸送に特化した鉄道会社も横浜を経済や産業面で盛り上げてきた。

次ページ:廃止計画もあった「桜木町駅」

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