「中村警察庁長官」が辞職 「准強姦逮捕状」握り潰しで注目され、戦後最長の安倍政権を支えた最後の官邸官僚

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国葬後から国葬前にシフト

 8月25日、警察庁の中村格長官が会見で辞職の意向を表明した。7月8日に発生した、安倍晋三元首相への銃撃を未然に防ぐことができなかったことについて責任を取ってのものだ。同時に奈良県警の鬼塚友章本部長も辞職する見通しだ。中村長官は戦後最長の安倍政権を支えた「官邸官僚」であり、准強姦容疑での逮捕状を自ら握りつぶしたことで「官邸の守護神」ともあだ名された人物だ。その霞が関人生をこの機をとらえて振り返っておきたい。

「中村長官の辞任は不可避と見られていましたが、当初は9月27日に開かれる安倍元首相の国葬後に発表との説があり、実際そのような動きもありました。しかし、元首相というトップ級の要人を銃撃死させ、社会不安を招いた警察トップが国葬を表向き取り仕切るのはブラックジョークではないかとの指摘もあり、元警察庁長官で官房副長官の栗生俊一氏が岸田文雄首相に進言したようです」

 と話す政治部記者は、「森喜朗元首相のインタビュー(8月2日の読売新聞)のインパクトも大きかった」と続ける。該当部分を紹介しておこう。

森元首相のインタビュー

《事件の起きた奈良の県警本部長の記者会見を見ていたが、話にならない。第一、これだけの事件だったのに、まだ誰も責任を取っていない。奈良県警本部長も警視総監も警察庁長官も、その上に立つ二之湯国家公安委員長も。本当は担当大臣は辞めなければいけない。これから事件を検証して、その後で責任を取ると言っても遅いのではないですか。警察側も警備に問題があったことは、もう認めている。それなのに、これから検証をして、それから警察庁長官が辞めるのですか。こんなバカげた話はないと思う》

 辞めることが決まっている人がその職を去るタイミングが少しずれただけなら、そう大差ないように見えるが、霞が関的にはそうではなく、まして警察トップの人事だけに影響は大きいようだ。ここで改めて、その足跡を辿っておこう。

 中村氏は私立ラ・サール高校から東大法学部を経て1986年4月に警察庁へ入庁。和歌山県警や千葉県警、警視庁捜査二課長などを経験した後、2010年から民主党政権下の内閣官房長官秘書官に就任した。

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