「中村警察庁長官」が辞職 「准強姦逮捕状」握り潰しで注目され、戦後最長の安倍政権を支えた最後の官邸官僚

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逮捕状の握り潰しを認める

 仮にそれが刑事部長として光の部分であったとしたら、陰の部分が「逮捕状の握り潰し」案件だったと言えるだろう。

 改めておさらいしておくと、2015年6月、警視庁高輪署は元TBS記者の山口敬之氏に対し、フリージャーナリスト・伊藤詩織さんへの準強姦容疑で逮捕状を取り、捜査をさらに進めようとしていた。しかし、当時、警視庁刑事部長だった中村氏が逮捕の中止を命じたことで直前になって取り止めとなった(最高裁は今年7月7日、「山口氏による性的暴行があった」ことを認めた)。

 この件については、中村氏が週刊新潮の取材に対して「私が決済した。(捜査の中止については)指揮として当然」とその事実を認めたことも話題となった。

 つまり逮捕の中止を命じたのは自分であることを隠そうともしなかったのだ。

「警察当局の幹部が個別の案件について取材に応じるというのはほぼ皆無で、現役はもちろん警察OBからも遺憾の声が上がりました。中村氏は普段から冷静沈着なタイプですが、少し油断があったのかもしれません。週刊新潮に喋ってからは、“メディアの幹部を逮捕するというのは大変なことなんだ。たとえ君たちであっても逮捕中止を命じたよ”などと記者たちに話していましたね。要は、捜査中止の判断は間違ってなかったと言いたかったのです」

 と、先の社会部記者。

国民に説明しづらい事件に

 ただ、こうした説明が「身内」の記者たちに共感を持って受け止められていたのかは定かではない。

「もちろん中村氏側に立つ意見は、警察内部にはあった。つまり証拠隠滅の可能性は低いのだから、取り調べるにしても身柄を取る必要はなく、任意で良いのではないかということです。そういった主張のほうが多かったと思います。

 実際、この件は、刑事事件としては嫌疑不十分、つまり、疑いは残るけども証拠が不十分だから起訴しないと検察が判断しました。中村氏はそれもあって、自身の判断の正当性を主張していたようにも記憶しています。

 ただ先日、民事事件では性的暴行があったことが最終的に認められたわけで、国民に説明する機会があったとしたら、少し説明しづらい案件になったことは間違いないでしょう」(同)

 山口氏が当時、発表した安倍首相(当時)についての著書はベストセラーとなっていた。現役の首相にここまで食い込み、内幕を書くことを許されているジャーナリストがいることは驚きをもって受け止められ、山口氏はワイドショーなどでもコメントを求められる存在となっていた。

 そんな記者の逮捕を取り消したことで、中村氏は「首相官邸の番犬」などと揶揄されることとなる。

 その一方で同じ刑事部長時代、この逮捕状握り潰しほどは知られていないものの、安倍氏と直接つながる「忖度捜査」に関わっていた。

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