「中村警察庁長官」が辞職 「准強姦逮捕状」握り潰しで注目され、戦後最長の安倍政権を支えた最後の官邸官僚

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もう1つの忖度捜査

 もっとも、こちらの事件はかなりスケールが小さい。

 ゲームセンターでのケンカである。

 車の運転シミュレーターゲームで未成年だった被害者と、加害者である成人男性が競ってプレーしていた際に、被害者が相手をけしかけるような言動を取り、それに反応した加害者が一発殴ったというものだ。

 理由が何であれ暴力は看過できないが、この「ゲーセンのケンカ」が単なる揉め事で終わらず大きな事件に発展したのは、被害者が安倍氏の元政策秘書の子息だったからだ。

 この案件には泣く子も黙る警視庁捜査一課の精鋭部隊が投入され、「3日以内の解決」を厳命、加害者には暴行容疑で逮捕状が出され、実際に逮捕された。

 一課を投入して加害者を逮捕することは中村氏の指示で、当の一課の面々は「この程度の案件でまさか逮捕までやるとは……」と茫然自失の体だったという(中村氏は当時、取材に対し、「捜査に関わっていない」と回答)。

 もちろんそれぞれの事案には細かな事情や経緯があり一概に言うことはできない。

 しかし、結果だけを見れば、官邸に極めて近い人物の逮捕状は握り潰す一方で、権力者側と揉めた者には、たとえ軽微な犯罪であっても捜査一課まで投入して逮捕を指示するという“忖度スタンス”が見て取れると言えるだろう。

ほぼ垂直に出世した異例パターン

 中村氏はその後も出世街道をひた走り、2016年8月から警察庁に移って組織犯罪対策部長に、17年8月には総括審議官、そして18年9月、次長に次ぐ官房長に、20年1月に次長、そして21年9月に長官へと昇り詰めた。
 
 これは出世のルートとしては珍しいパターンなのだという。

「警視庁の広報課長や警察庁の人事課長、会計課長、総務課長あたりを経験すると、長官や総監の有資格者だと言われてきたのですが、中村氏はそのどれもやっていませんし、そもそも道府県警の本部長にもなっていない。ほぼ垂直に出世していった極めて珍しいタイプです」(前出の社会部デスク)

 なぜそのようなことが実現したのか。そこには官邸との関係に加えて、栗生官房副長官の存在もある、とこのデスクは解説する。栗生氏は中村氏の2代前の警察庁長官で、現在は岸田政権で官房副長官と内閣人事局長を兼任している。

「中村氏の出世の背景には、官邸との蜜月ぶりに加えて栗生官房副長官に目をかけられたということも大きいと思います。栗生氏は長官就任が確実視される前から、退職後の再就職先も含めたキャリアの人事をコントロールする立場にありました。中村氏やその次に長官に就任する予定の露木氏、そしてその後も、栗生氏がレールを敷いたものです。旧来の警察官僚の殻を破るようなタイプが好みで、中村氏は気に入られた一人です」(同)

 結果として、中村氏を引き立てた栗生氏その人が今回、早めの辞任を促す役目を背負ったことになる。

 第二次安倍政権以降、官邸の存在感が増したことで、官邸官僚が話題になることは多かった。代表的な存在としては、安倍~菅政権の間に官房副長官を務めた杉田和博氏、秘書官や補佐官を務めた今井尚哉氏、内閣情報官から国家安全保障局長に転じた北村滋氏らの名があがる。

 そして中村氏は最後に霞ヶ関に残った官邸官僚だった。

デイリー新潮編集部

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