今どきのヤクザは続けても辞めても大変…現役組長と元暴力団員に襲い掛かったトラブル

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 ご承知のように、暴力団を取り締まる法規制は1990年代以降から急速に強化されてきた。全国の暴力団員数は年々減少を続け、老舗組織といえども弱体化や解散を余儀なくされるケースも続出している。【藤原良/作家・ノンフィクションライター】

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 暴力団が解散する場合、本部がある地域の警察署の署長宛に「解散届」を提出するのが通例だ。

 ところが昨今、解散届を受理したにもかかわらず、警察が解散を認めないケースがある。一体、どういうことか?

 暴力団に対する法規制が厳罰化されるなか、法の目をかいくぐって生き残るための策として、「偽装行為」を企てる組織があるからだ。

 例えば代替わりの偽装だ。ニセの二代目組長を新しく擁立し、本物の初代組長への捜査追求をかわす。偽装解散を行い、組織ごと地下に潜ることもある。いずれも偽装の手口は大胆で巧妙だ。

 こうした偽装行為を警察が確認しているため、解散届を受け取っても鵜呑みにはできないという状況が続いている。

 治安維持を担う警察当局が、暴力団や犯罪組織に「本当のことを隠しているのではないか」という強い姿勢で臨むことは、もちろん悪い話ではない。

 だが、あまりに度が過ぎてしまうと、「疑わしきは罰せず」「無罪推定の原則」という刑事裁判上の法諺(ほうげん)に反し、無意味な別件逮捕や冤罪を生み出しかねない。バランスの取り方が難しいところでもある。

暴力団員と誤認逮捕

 誤認逮捕とは、真犯人ではない者が逮捕されることをいう。現行犯逮捕を除くと、容疑者が本物の犯人であるという確証は100%ない状態で逮捕を執行せざるを得ない。

 だからこそ逮捕に至るまでの捜査は入念かつ慎重に行わなければならないのだが、被疑者が暴力団員だと捜査側が安易に逮捕してしまうケースがある。

 某暴力団幹部のAさんが、まさにそうだった。外国から覚醒剤を密輸した罪で、Bという人物が当局に逮捕された。その数カ月後、Aさんも身に覚えのない容疑で当局に逮捕されたのだ。

 Bが事件の主犯格だった。Bへの取り調べで得られた自供内容から、数人の共犯者たちが次々に逮捕された。

 彼らはBも含めて全員が外国籍の男で、日本語による会話が不充分だった。当局の取り調べは、言葉の壁によって難航した。そんな中で、共犯者のひとりだったCの口からAさんの名前が出たのだった。

 そもそも当局は、外国籍の彼らのことを取り調べるうえで、「日本語も不得手な彼らが日本国内に覚醒剤を密輸するということは、必ず日本人のボスや協力者がいるはずだ」という一方的な捜査方針で臨んでおり、この方針に沿って“日本人のボスや協力者”を自白させることが取り調べの焦点となっていた。

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