老舗寄席・末廣亭の経営難に席亭は「ケタ違いのキツさ」 神田伯山らの奮闘で復活なるか

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「2年半くらい前までは普通に興行ができていましたが、コロナ禍で一変してね。ひどい時はお客さんが普段と比べて9割も減りましたし、稼ぎ時の正月初席も、昨年は客席がまばら。経験したことのない、ケタ違いのキツさでしたよ」

 新型コロナウイルスに振り回された日々を振り返るのは、東京・新宿3丁目の寄席・新宿末廣亭で席亭を務める真山由光氏(71)だ。

 都内では末廣亭のほか、上野の鈴本演芸場、浅草演芸ホール、池袋演芸場、そして千代田区の国立演芸場と五つの寄席が営業中だ。新宿末廣亭は、終戦直後の昭和21年の開業。木造の2階建てで上手(かみて)下手(しもて)に桟敷席が設けられており、江戸の情緒をいまに伝える老舗のひとつである。

「このまま資金不足が続けば、経営破綻が近いと言わざるを得ない。そこでクラウドファンディングに頼ることにしたんです」

理事会で“やめよう”の声も

 すでに昨年5月から6月にかけては落語協会と落語芸術協会が中心となって、全国の寄席への支援を呼びかける「寄席支援クラウドファンディング」が行われた。全国から集まった支援は実に1億円を超え、新宿末廣亭は2千万円の支援を手にした。

「本当に有り難いことでしたが、万能薬ではありませんでした。現実的には“つなぎ資金”にしかならなかったんです。コツコツためてきた内部留保も枯渇寸前。去年の理事会では“無理をして続けるくらいならやめよう”なんて声も出ましたが、席亭としては簡単にはやめられません。芸人はもとより、スタッフ、何よりお客様のためにも何とか存続させたいんです」

 今年5月のスタートで、目標金額は5千万円に設定。返礼品は支援額によって異なるが、主に招待券や千社札を受け取れる。限定10口の100万円を寄付すれば、年間パスポートに加えて特製Tシャツと湯のみも贈られるという。それでも、7月18日の時点で集まった額は1730万円に過ぎない。

「協力して下さった方々には感謝の気持ちでいっぱいで、“末廣亭がなくちゃ困るよ”といった温かい声には、本当に力を頂いています。とはいえ、最近は支援が停滞しているのも事実。長期間にわたるクラウドファンディングでは、呼び掛けの初期と終わりの時期に支援が集中するそうなので、引き続き頑張るつもりです」

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