じつは意外に多いヤクザの自殺 2つの実例から見えてくる根本的な原因とは

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深刻な依存症

 長い刑務所暮らしを終え、シャバでカネを得たが、暴力団員では行き場もなく、息抜きもなく、ただ自宅に籠りながら、Bさんは、そのうち、精神を病んでいった。

 暴力団を辞めればいいと言う人もいるが、Bさんの場合は覚醒剤ビジネスで稼いだだけに、今更、簡単に暴力団を辞めるわけにもいかなかった。辞めれば、いつ自分のことを警察に売られてしまうか分からない。そうなれば、また長い刑務所暮らしが待っている。

 そして気が付いた頃には、Bさんは深刻な覚醒剤依存症となっていた。Bさんは自分自身が、まさかディープな依存症患者に成り果てるとは思ってもいなかった。Bさんは今の自分の姿を見て、大きく落胆したのだった。

 薬物中毒者の更生施設への相談も考えたが、現役の暴力団幹部で、覚醒剤の密売者で、自身も覚醒剤中毒者であるというような話を、いくら更生施設の担当者が相手であろうとも、そんな犯罪のオンパレードみたいな話をすることはいささか躊躇された。こうしてBさんは、すべてを辞めたいが、すべてを辞めるわけにはいかないという出口のないパラドックスに陥った。

社会的抹殺への疑問

 日に日にBさんのカラダは覚醒剤に侵されていくばかりで、そして、その日、ホテルでBさんは、覚醒剤の過剰摂取で死亡しているのを発見された。

 覚醒剤ビジネスをしていたBさんが、クスリの使用量を間違えたとは考えにくい。Bさんは確実に自分の致死量を把握していた。そして彼は死んだ。

 人間はいつしか、法律に縛られて暮らすという社会で生きることが当たり前となった。その社会では当然のように、反社会的活動をした者は生きていけなくなる。だが、この社会に魅力がなかったり、うまく順応できなかった者はどうすればいいのだろうか? 今のところ、自殺という手段しかないのだろうか?

 ご存知のように暴力団員は、暴対法をはじめとした数多くの法規制によって生活に制限が課せられている。

 今の時代、自分名義の銀行口座の開設やスマホの契約すらさせてもらえないようでは、暴力団員に人権はないと言っても過言ではないのかもしれない。この御威光により、暴力団員になろうとする若者も減れば、暴力団から脱会する人も増えており、日本の暴力団員の総数は年々減少しているが、この減少傾向の内訳には脱会者や離脱者ばかりではなく、自殺者も含まれていることを見落としてはならない。

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