じつは意外に多いヤクザの自殺 2つの実例から見えてくる根本的な原因とは

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行き場がなかった

 長期刑を終えて出所した暴力団幹部のBさん。刑務所出所者の更生システムが乏しい日本社会で、出所者の再犯率は高い。逮捕者の率だけでいえば、一昨年は49・1%(法務省発表)と過去最高となっている。そしてBさんは、出所後も組幹部を続けた。だが、昨今の暴力団業界事情により、Bさんにはこれといったシノギもなく、生活は困窮していた。

 日本の常識も知らず、日本語もほとんど話せない外国人であっても、瞬く間に数千万円、数億円の大金を稼ぎ出せてしまうのが覚醒剤ビジネスである。そんなわけで、Bさんが覚醒剤ビジネスに手を染めるのに時間はかからなかった。

 普通、商売というものは、飲み屋であっても風俗であっても、繰り返し警察の摘発を受ければ客足も減り、商売としての勢いを失って衰退していくものである。

 が、覚醒剤ビジネスは正反対で、警察の摘発によって国内における覚醒剤の流通量が減れば、すぐに販売価格が高騰し、本来3万円のブツが6万円、9万円と値上がりして密売市場がさらに活性化してしまう。客という中毒者がいる以上、品物が減れば希少性と購買意欲がさらに高まるという図式なのである。

 このビジネスを始める前、Bさんも覚醒剤の使用経験があったが、刑務所に長期服役していたのでカラダからクスリは抜けていた。

 ビジネスをするにあたって、商品の品定めをするため、Bさんは再び覚醒剤の使用者となった。

 ここで言いたいことは、覚醒剤ビジネスが儲かるという話ではなく、時として「覚醒剤が自殺の道具にもなり得る」という話である。

 覚醒剤の使用には、致死量というものが存在する。致死量には個人差があるが、簡単に言えば、体内に多く入れれば確実に死ぬのである。覚醒剤とはそれだけ強い薬物なのである。

 Bさんは覚醒剤ビジネスでそれなりのカネを手に入れることに成功したが、決して楽しい思いはしなかった。昔ならあちこち遊び歩くこともできたが、昨今では「暴力団員及び暴力団関係者の入店を固くお断りします」といった標識を掲げている店や施設も多く、旅行も規制だらけで、はっきり言って遊ぶ所がないのでカネの使い道がなかった。

引き籠った組員

 先例に挙げた外国人犯罪者たちは、日本国内の覚醒剤ビジネスでひと儲けすると、そのカネを原資にしてビジネス展開させて、レストランや会社を営み、本国から人を呼び寄せて雇用し、組織化を達成させてさらなる犯罪ビジネスを企てるというズル賢さを兼ね備えている者も多いが、暴力団員の場合は、わりと正直と言うか、外国人犯罪者ほどのしたたかさはなく、稼げば、なくなるまで使うという単純行動の繰り返しである。

 経済還元率100%と言ってもいいぐらいの使いっぷりだ。ひと昔前なら、そんな暴力団員の豪快な散財スタイルをアテにして商売が成立していた飲食店や洋服店や販売店がいくつもあった。

 だが今となっては、なんとかしてカネを稼いでも、暴力団員にはその使い先すらほとんどなく、宝の持ち腐れのようになってしまうケースも多い。Bさんもそのひとりだった。

 暴力団不況時代の昨今にあって、カネを手に入れたBさんは、所謂、勝ち組なのかもしれないが、Bさんは暴力団員であるが故に、カタギの勝ち組のみなさんのように優雅な夕食をとることもできず、自宅に引き籠るだけの生活を余儀なくされ続けた。

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