「保険を掛けない」藤井聡太棋聖の強さ 永瀬王座相手に棋聖防衛へあと1局

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 将棋の「ヒューリック杯棋聖戦」五番勝負の第3局が7月4日、千葉県木更津市のホテルで行われ、藤井聡太棋聖(19)が永瀬拓矢王座(29)に快勝して2勝1敗とし、タイトル防衛に「王手」をかけた。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

序盤ハイスペースで進む対局

 対局後に藤井は「途中、あんまり自信のない局面もあったのですが、最後は上に玉を逃がしていって少し余せる(余裕がある)形になったのかなと思います」などと振り返った。これで初タイトルだった棋聖位の3連覇にも王手をかけたが、「スコアは意識せずに、しっかり準備して臨めればと思います」と話した。一方、土俵際に立たされた永瀬は「次局までに少しでも棋力を上げていい内容の将棋を指したい」と悔しそうだった。

 藍色の和服をまとった藤井が先手。対する後手の永瀬は濃紺の背広姿だ。

 序盤に角を交換して手持ちにし、「腰掛け銀」という銀を中央付近に繰り出す戦法を選んだ。第1、2局と同じだ。互いに研究し尽くしているせいか、午前9時開始の序盤は驚異的なスピードで進んだ。持ち時間は各々4時間なのに、10時半頃には既に70手以上に達し、互いに持ち時間を数分も消化していないのだ。

 対局後、このハイペースについて藤井は、「考えていた展開のひとつ」と淡々としていた。この間、永瀬が攻勢に出て藤井が受けるような形が続いたが、昼前に藤井が相手陣に打ち込んだ73手目の「2二歩」で永瀬が長考に沈む。

 永瀬が1時間40分ほどかけて「3三桂馬」と応じたころから、互角だった形勢が藤井に傾き出す。

 昼食に「鴨せいろ蕎麦」を食べた藤井が、今度は攻勢に転じる。以降、AI(人工知能)の評価値もほぼ7割方、藤井の優勢を示す。永瀬も粘ったが、最後まで藤井優勢が揺らぐことはなかった。「3三桂馬」について永瀬は、「指し手が難しいなと思いながら指してしまった」と振り返っていた。

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